「会社に企業型DCがあるけど、iDeCoも使えるの?」「企業型DCとiDeCoって何が違うの?」――そんな疑問を持つ会社員は多いのではないでしょうか。
2022年10月の制度改正により、多くの会社員が企業型DC(企業型確定拠出年金)に加入しながらiDeCoも利用できるようになりました。さらに2026年には掛金上限の大幅引き上げなど重要な改正が予定されています。
この記事では、iDeCoと企業型DCの基本的な違いから、2026年改正後の併用ルール・掛金上限・どちらを選ぶべきかの判断基準まで、最新情報をもとに徹底解説します。
iDeCoと企業型DCの基本的な違いを一覧で確認
まずはiDeCoと企業型DCの違いを表で整理しましょう。
| 項目 | iDeCo(個人型DC) | 企業型DC(企業型確定拠出年金) |
|---|---|---|
| 掛金の負担者 | 加入者本人(全額) | 原則は会社(事業主掛金)。マッチング拠出なら本人も上乗せ可 |
| 加入できる人 | 20歳以上65歳未満(2027年1月以降70歳未満に拡大予定)の国民年金被保険者 | 企業型DCを導入している会社の従業員 |
| 加入の手続き | 本人が証券会社・銀行等に申し込む | 会社が自動加入(選択の余地なし) |
| 運用商品の選択 | 自分で金融機関・商品を選ぶ | 会社が用意した商品ラインナップから選ぶ |
| 口座管理手数料 | 最低171円/月(金融機関による) ※2027年1月引落分以降は月186円(国民年金基金連合会120円+信託銀行66円)に改定予定 | 会社負担(本人負担なしが一般的) |
| 掛金の所得控除 | 全額所得控除 | 事業主掛金は控除なし。マッチング拠出分は全額所得控除 |
| 転職・退職時 | 手続きすれば継続可能 | 転職先の制度に移換手続きが必要 |
| 受け取り開始年齢 | 60〜75歳の間で選択 | 60〜75歳の間で選択(規約による) |
最大の違いは「誰が掛金を出すか」です。iDeCoは自分で毎月拠出するのに対し、企業型DCは会社が拠出します。どちらも「確定拠出年金」という枠組みは同じで、運用成果によって将来受け取れる額が変わります。
企業型DC(企業型確定拠出年金)とは
企業型DCは、企業が従業員の老後資金を積み立てるために導入する年金制度です。会社が毎月一定額(事業主掛金)を拠出し、従業員は会社が用意した運用商品の中から自分で選んで運用します。
マッチング拠出とは
企業型DCには「マッチング拠出」という仕組みがあります。会社(事業主)の掛金に加えて、従業員本人も掛金を上乗せできる制度です。マッチング拠出分は全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になるため、税メリットがあります。
2026年4月の改正前は「加入者のマッチング拠出額は事業主掛金以下でなければならない」というルールがありました。たとえば会社が月1万円拠出している場合、本人のマッチング拠出も最大1万円に制限されていたのです。
2026年4月改正でこの上限ルールが撤廃されました。事業主掛金の金額に関わらず、月額上限(現行5.5万円)から事業主掛金を引いた金額まで本人がマッチング拠出できるようになっています。
企業型DCの掛金上限(現行)
| 加入状況 | 月額上限 |
|---|---|
| 企業型DCのみ(DBなし) | 5万5,000円 |
| 企業型DC+DB(確定給付年金)など他制度あり | 2万7,500円 |
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCoは個人が自分で加入・拠出・運用先の選択をする年金制度です。毎月の掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となるため、所得税・住民税の節税効果があります。
iDeCoの節税効果については、こちらの記事で年収別に詳しく解説しています。
iDeCoの節税効果は年収別にいくら?早見表と2026年改正後シミュレーションで徹底解説
iDeCoの掛金上限(現行)
| 加入状況 | iDeCoの月額上限 |
|---|---|
| 自営業者(第1号被保険者) | 6万8,000円(国民年金基金等との合算) |
| 会社員・企業型DCなし(第2号被保険者) | 2万3,000円 |
| 会社員・企業型DCあり(DBなし) | 2万円 |
| 会社員・企業型DC+DBあり | 1万2,000円 |
| 公務員 | 1万2,000円 |
| 専業主婦(第3号被保険者) | 2万3,000円 |
企業型DCとiDeCoの「併用」ルール|2022年10月改正で大きく変わった
以前は企業型DCに加入している会社員がiDeCoを利用するには、勤務先の企業型DC規約に「iDeCoへの加入を認める」旨の記載が必要でした。規約変更には手間がかかるため、iDeCoを使えない会社員が多かったのです。
2022年10月の法改正で、規約の定めなしに企業型DCとiDeCoの併用が可能になりました。多くの会社員が「申し込むだけ」でiDeCoを使えるようになったのは大きなメリットです。
企業型DC加入者がiDeCoを使える条件(2026年12月改正前)
- 勤務先の企業型DCでマッチング拠出を利用していないこと
- 企業型DCの事業主掛金が各月の拠出限度額(月5.5万円またはDBあり2.75万円)の範囲内で毎月拠出されていること
- iDeCoの掛金と事業主掛金の合計が月5.5万円(DBあり2.75万円)以内であること
- iDeCoの掛金単体が月2万円(DBあり1.2万円)以内であること
重要なのは「マッチング拠出とiDeCoはどちらか一方しか選べない」という点です。マッチング拠出を利用している会社員はiDeCoに加入できません。
iDeCoに加入できる5つのパターン
| パターン | iDeCo加入 | iDeCo月額上限 |
|---|---|---|
| ①企業型DCなし(会社員) | ○ | 2万3,000円 |
| ②企業型DCあり・マッチング拠出なし(DBなし) | ○ | 2万円 |
| ③企業型DCあり・マッチング拠出なし(DBあり) | ○ | 1万2,000円 |
| ④企業型DCあり・マッチング拠出あり | ✕(マッチング拠出と併用不可) | − |
| ⑤企業型DCあり・事業主掛金が上限額(5.5万円)と同額 | ✕(枠がゼロのため) | − |
2026年改正で何が変わる?掛金上限の引き上げと新ルール
2026年は企業型DC・iDeCo両制度にとって大きな転換点です。2段階の改正が予定されています。
【2026年4月改正】企業型DCのマッチング拠出上限ルール撤廃
これまでマッチング拠出には「加入者の拠出額が事業主掛金以下」という制約がありました。2026年4月からこの制約が撤廃され、事業主掛金の金額に関わらず拠出限度額の範囲内で上乗せできるようになりました。
| 項目 | 2026年3月まで | 2026年4月以降 |
|---|---|---|
| マッチング拠出の上限 | 事業主掛金と同額まで | 月額上限から事業主掛金を引いた額まで |
| 例:事業主掛金1万円の場合 | 本人のマッチング上限=1万円 | 本人のマッチング上限=4.5万円(5.5万−1万) |
【2026年12月改正】拠出限度額を月6.2万円に引き上げ
2026年12月(2027年1月引落分から)は、企業型DC・iDeCoの共通上限が月5.5万円から月6.2万円に引き上げられます。また、iDeCoの単体上限(2万円・1.2万円という別途の制限)が撤廃されます。
| 加入状況 | 現行のiDeCo上限 | 2026年12月以降のiDeCo上限 |
|---|---|---|
| 企業型DCあり(DBなし) | 2万円(かつ合計5.5万円以内) | 6.2万円−事業主掛金額 |
| 企業型DCあり(DBあり) | 1.2万円(かつ合計2.75万円以内) | 6.2万円−事業主掛金額−他制度掛金相当額 |
具体例:事業主掛金が月1万円の場合、現行は iDeCoに月2万円まで拠出できます。2026年12月以降は「6.2万円−1万円=5.2万円」まで拠出できるようになります。この改正により節税・資産形成の効果が大幅に拡大します。
iDeCoの加入可能年齢の70歳未満への拡大は2027年1月施行予定です(2026年12月の掛金上限引き上げとは別タイミング)。定年後も働き続ける方が老後資金をさらに積み上げられる機会が広がります。
マッチング拠出 vs iDeCo|どちらを選ぶべきか
企業型DCに加入している会社員にとって最大の選択肢は「マッチング拠出にするか、iDeCoにするか」です。両者は併用できないため、どちらを選ぶかを決める必要があります。
マッチング拠出が向いている人
- 口座管理手数料を節約したい人:マッチング拠出は会社が手数料を負担するため本人負担ゼロが一般的。iDeCoは最低171円/月(年2,052円)の手数料がかかる(※2027年1月引落分以降は月186円(国民年金基金連合会120円+信託銀行66円)に改定予定)
- 現在の企業型DCの運用商品に満足している人:マッチング拠出は同じ商品ラインナップで運用できる
- 転職の予定がない人:企業型DCは在籍中の利便性が高く手続きも不要
- 手続きの手間を減らしたい人:マッチング拠出は会社内で完結し、iDeCoのような口座開設・証券会社選びが不要
iDeCoが向いている人
- 運用商品の自由度を求める人:iDeCoは金融機関を自由に選べ、信託報酬が低いインデックスファンドを選択しやすい
- 転職・独立の可能性がある人:iDeCoは自分名義で管理するため転職後も継続しやすい(企業型DCは会社が変わるたびに移換手続きが必要)
- 企業型DCの掛金上限を超えて節税したい人:iDeCoで追加拠出することで所得控除を増やせる
- 企業型DCの商品ラインナップに不満がある人:iDeCoで自分の好みの商品を選べる
マッチング拠出とiDeCoの比較表
| 比較項目 | マッチング拠出 | iDeCo |
|---|---|---|
| 口座管理手数料 | 会社負担(本人ゼロが多い) | 最低171円/月(年2,052円〜) ※2027年1月引落分以降は月186円に改定予定 |
| 運用商品の選択肢 | 会社が用意した商品のみ | 金融機関を自由に選択 |
| 節税効果 | 掛金全額を所得控除 | 掛金全額を所得控除(同等) |
| 転職時の手続き | 企業型DCのまま(会社が対応) | 自分で継続手続き |
| 手続きの手間 | 少ない(会社内で完結) | 口座開設・金融機関選びが必要 |
| 2026年12月以降の上限 | 6.2万円−事業主掛金 | 6.2万円−事業主掛金(同等) |
節税効果・掛金上限は同等です。「手数料ゼロ・手続き簡単」を重視するならマッチング拠出、「商品の自由度・転職後も継続」を重視するならiDeCoが向いています。
自分に合った選択肢を判断するフロー
企業型DC加入者がどの選択をすべきか、以下のフローで確認しましょう。
- 勤務先に企業型DCがあるか?
→ ない場合:iDeCoに加入(月2.3万円が上限) - 企業型DCのマッチング拠出制度があるか?
→ ない場合:iDeCoと企業型DCを自動的に併用可能 - マッチング拠出と iDeCo、どちらを選ぶか?
→ 手数料・手続きを重視:マッチング拠出
→ 商品の自由度・転職対応を重視:iDeCo - iDeCoを選んだ場合、どの金融機関にするか?
→ 信託報酬最安のインデックスファンドが豊富な証券会社を選ぶ
転職・退職した場合の企業型DCとiDeCoの手続き
転職や退職をした場合、企業型DCとiDeCoでは対応が異なります。
企業型DCの場合
- 転職先に企業型DCがある場合:転職先の企業型DCに資産を移換(ポータビリティ)
- 転職先に企業型DCがない場合:iDeCoに移換(手続きが必要)
- 退職・独立の場合:iDeCoに移換(6か月以内に手続きしないと国民年金基金連合会の口座に自動移換されて運用停止・手数料がかかる)
iDeCoの場合
- 転職・退職後も継続可能(加入資格を満たす限り)
- 転職先に企業型DCがある場合、iDeCoの掛金上限が変わるため変更手続きが必要
- 専業主婦になる場合も加入継続できる(月2.3万円まで)
転職・退職時の具体的な手続きについては、こちらの記事も参考にしてください。
iDeCo転職・退職した場合の手続きと6か月の期限
iDeCoと企業型DCの税メリットを最大化するポイント
iDeCoと企業型DCには共通して3つの税メリットがあります。
- 掛金が全額所得控除:毎月の掛金が丸ごと所得控除になり、所得税・住民税が軽減される
- 運用益が非課税:通常の投資口座では運用益に20.315%の税金がかかるが、iDeCo・企業型DC内では非課税
- 受け取り時の控除:一時金受け取りなら退職所得控除、年金受け取りなら公的年金等控除が適用される
節税効果は掛金が多いほど大きくなります。2026年12月改正で上限が引き上げられるため、節税メリットが大幅に拡大します。年収別の節税シミュレーションはこちら。
iDeCoの節税効果は年収別にいくら?早見表と2026年改正後シミュレーション
また、受け取り方によって税負担が大きく変わります。一時金・年金・併用のどれが有利かはこちらで解説しています。
iDeCoの受け取り方は一時金・年金どちらが得?2026年「10年ルール」改正
具体的なシミュレーション|年収別の節税メリット比較
マッチング拠出またはiDeCoで月2万円を追加拠出した場合の節税メリット(年額)を年収別に見てみましょう。どちらを選んでも節税額は同等です。
| 給与年収 | 所得税率(目安) | 住民税率 | 月2万円拠出時の年間節税額 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 10% | 10% | 約4万8,000円 |
| 600万円 | 20% | 10% | 約7万2,000円 |
| 800万円 | 23% | 10% | 約7万9,200円 |
| 1,000万円 | 33% | 10% | 約10万3,200円 |
2026年12月改正後は上限が月6.2万円に拡大します。たとえば事業主掛金が月1万円の会社員が改正後にiDeCoまたはマッチング拠出で月5万円拠出できるようになった場合、年収600万円の人で年間約18万円の節税が期待できます。2026年12月以降は積極的に上限近くまで活用することを検討しましょう。
まとめ:iDeCoと企業型DC、どう組み合わせる?
- 企業型DCは会社が掛金を拠出、iDeCoは自分が拠出する点が最大の違い
- 2022年10月改正で規約変更なしに企業型DC+iDeCoの併用が可能になった
- マッチング拠出とiDeCoは併用不可:どちらか一方を選ぶ必要がある
- 手数料節約・手続き簡便ならマッチング拠出、商品の自由度・転職対応ならiDeCo
- 2026年4月:マッチング拠出の「事業主掛金以下」制限が撤廃
- 2026年12月:掛金上限が月5.5万円→6.2万円に引き上げ、iDeCo単体上限(2万円)も撤廃
- 転職時はiDeCoの方が手続きが少なく継続しやすい
企業型DCに加入している会社員は、まず「マッチング拠出制度があるか」「運用商品に満足しているか」を確認しましょう。手数料を節約しながら手軽に節税したいならマッチング拠出、より高いリターンを目指して商品を選びたいならiDeCoが適しています。2026年12月の改正後はどちらの上限も大幅に拡大するため、今から制度を理解して最大限活用する準備をしておくことをお勧めします。
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