「会社の企業型DCに入っているけど、iDeCoも併用した方が得なの?」「マッチング拠出とiDeCo、どちらを使えばいいの?」——勤務先に企業型確定拠出年金(企業型DC)がある会社員が、老後資金の上積みを考えるときに必ず迷うのがこのポイントです。
結論から言うと、判断の分かれ目は「マッチング拠出制度が会社にあるか」と「会社の事業主掛金がいくらか」の2点です。手数料だけ見ればマッチング拠出が有利ですが、商品ラインナップや拠出できる枠まで含めると、iDeCo併用の方が得になるケースも少なくありません。
この記事では、企業型DC加入者が取れる選択肢を整理したうえで、マッチング拠出とiDeCo併用は結局どちらが得なのかを、ケース別のシミュレーションで具体的に比較します。2026年4月・2026年12月(2027年1月適用)の大型改正でどう変わるかも、最新情報をもとに解説します。
- 企業型DC加入者の選択肢は「iDeCo併用」「マッチング拠出」「何もしない」の3つ
- マッチング拠出とiDeCoは同時併用できない(どちらか選択制)
- 手数料はマッチング拠出が有利(会社負担)、商品・自由度はiDeCoが有利
- 会社にマッチング拠出制度がなければiDeCo併用一択
- 2026年12月改正でiDeCo上限が合算で月6.2万円に大幅アップ
1. 企業型DC加入者が老後資金を増やす3つの選択肢
勤務先に企業型DCがある会社員が、会社の掛金(事業主掛金)に「自分のお金を上乗せ」して老後資金を増やす方法は、大きく3つあります。まずはこの全体像を押さえましょう。
- ①iDeCo(個人型確定拠出年金)を併用する:企業型DCとは別に、自分でiDeCo口座を開いて掛金を出す
- ②マッチング拠出を使う:会社の企業型DCの仕組みの中で、事業主掛金に自分の掛金を上乗せする(会社がマッチング拠出制度を導入している場合のみ)
- ③何もしない:会社の事業主掛金だけで運用する
ここで重要なのが、「②マッチング拠出」と「①iDeCo併用」は同時に使えない(選択制)というルールです。マッチング拠出を選んだ人はiDeCoを併用できず、iDeCoを併用する人はマッチング拠出を使えません。つまりこの記事のテーマは、突き詰めれば「マッチング拠出 vs iDeCo併用、どちらが得か」という選択になります。
マッチング拠出は、会社が制度として導入していなければ利用できません。導入していない会社の社員は、上乗せしたいならiDeCo併用の一択になります。まずは勤務先の制度を確認しましょう。
2. 【前提】併用できる条件と掛金上限(2026年最新ルール)
「どちらが得か」を考える前に、そもそもいくらまで拠出できるのか、2026年6月時点のルールを整理します。
iDeCo併用の場合の掛金上限
企業型DC加入者がiDeCoを併用する場合、iDeCoの掛金上限は次の式で決まります。
= 月額5万5,000円 −(企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額)
※ただし上限は月2万円(年24万円)まで
たとえば会社の事業主掛金が月2万円なら、5.5万円−2万円=3.5万円ですが、iDeCo側の上限2万円が適用され、iDeCoには月2万円まで拠出できます。一方、事業主掛金が月4万円なら、5.5万円−4万円=1.5万円までしかiDeCoに出せません。事業主掛金が月3.5万円を超えると、iDeCoの枠は2万円から削られていく仕組みです。
なお2024年12月の改正で、確定給付企業年金(DB)など他制度に加入している人のiDeCo上限も、それまでの月1.2万円から月2万円に引き上げられ、合算管理に統一されました。
マッチング拠出の場合の掛金上限(現行ルール)
マッチング拠出には、2026年3月までは次の2つの制限があります。
- 加入者掛金(自分の上乗せ分)は事業主掛金を超えられない
- 事業主掛金+マッチング拠出の合計で月5.5万円が上限
つまり事業主掛金が月1万円しかない会社では、マッチング拠出も月1万円までしか出せません。事業主掛金が少ない会社ほど、マッチング拠出で増やせる枠は小さくなります。この点は後述する改正で大きく変わります。
3. マッチング拠出 vs iDeCo併用|5つの比較ポイント
同じ「掛金を全額所得控除できる」制度であり、節税効果は同じ掛金額なら基本的に同じです(どちらも小規模企業共済等掛金控除の対象)。では何で差がつくのか。判断材料となる5つのポイントを比較します。
| 比較項目 | マッチング拠出 | iDeCo併用 |
|---|---|---|
| 口座管理手数料 | ◎ 会社負担(無料) | △ 自己負担(年約2,000円〜) |
| 拠出できる枠 | △ 事業主掛金次第(〜2026年3月) | ○ 最大月2万円 |
| 運用商品の選択肢 | △ 会社が用意した商品のみ | ◎ 金融機関を自分で選べる |
| 金融機関の自由度 | × 選べない | ◎ 低コスト商品の会社を選べる |
| 転職・退職時 | ○ 移換手続きが必要 | ◎ そのまま持ち運べる |
マッチング拠出が有利な点
最大のメリットは口座管理手数料が会社負担になること。iDeCoは加入者が手数料を負担し、運営管理機関手数料が無料の金融機関を選んでも、国民年金基金連合会と事務委託先(信託銀行)に毎月最低171円(年約2,052円)かかります。さらに加入時に2,829円が必要です。マッチング拠出ならこれらがかからず、長期になるほど手数料差が効いてきます。給与天引きで手間がない点もメリットです。
iDeCo併用が有利な点
iDeCoは金融機関を自分で選べるのが最大の強みです。会社の企業型DCの商品ラインナップは信託報酬が高めだったり、選択肢が少なかったりすることが珍しくありません。iDeCoならSBI証券・楽天証券・マネックス証券など低コストの全世界株式・S&P500インデックスファンドを扱う金融機関を選べます。さらに転職・退職してもそのまま持ち運べるため、働き方が変わる可能性がある人にも向いています。
4. 【シミュレーション】ケース別にどちらが得か計算してみた
抽象論ではイメージしにくいので、年収500万円の会社員(所得税・住民税の合計税率を約20%と仮定)を例に、3つのケースで具体的に比較します。
ケースA:マッチング拠出制度あり・事業主掛金が月2万円の会社
事業主掛金が月2万円なら、マッチング拠出もiDeCo併用もどちらも月2万円まで上乗せ可能です(iDeCoは5.5万円−2万円=3.5万円だが上限2万円)。拠出額が同じなら節税額も同じで、月2万円×12か月×20%=年4.8万円の節税になります。
この場合の差は手数料です。iDeCoは年約2,052円+初回2,829円。マッチング拠出は無料。長期で見れば手数料分マッチング拠出が有利ですが、会社の運用商品の信託報酬がiDeCoの低コスト商品より高ければ、その差が手数料差を上回ることもあります。→ 商品の質で判断。低コスト商品が揃っているならマッチング拠出が無難。
ケースB:マッチング拠出制度がない・企業型DCのみの会社
マッチング拠出制度がそもそもない会社では、上乗せしたいならiDeCo併用が唯一の選択肢です。事業主掛金が月2万円なら、iDeCoに月2万円を上乗せでき、年4.8万円の節税+運用益非課税のメリットを得られます。手数料を払ってでも、老後資金の非課税枠を広げる価値は十分にあります。
ケースC:事業主掛金が高い会社(月4万円)
事業主掛金が月4万円の場合、iDeCo併用の枠は5.5万円−4万円=月1.5万円まで。一方マッチング拠出は「事業主掛金(4万円)を超えられない」かつ「合計5.5万円まで」なので、こちらも月1.5万円まで。枠は同じため、ここでも手数料が無料のマッチング拠出がやや有利になります。ただし商品ラインナップが弱ければiDeCo併用を選ぶ判断もあります。
長期で見た「手数料差」はどれくらい?
iDeCo併用とマッチング拠出の最も分かりやすい違いは口座管理手数料です。iDeCoは運営管理機関手数料が無料の金融機関を選んでも、毎月171円(年2,052円)+初回2,829円がかかります。これを20年間積み上げると、2,052円×20年+2,829円=約4万4,000円。マッチング拠出ならこの約4.4万円がゼロです。
ただしこれは「商品の信託報酬が同じ」という前提の話です。たとえばiDeCoで信託報酬0.1%の全世界株式を選べるのに、会社の企業型DCには0.5%の商品しかない場合、資産が大きくなるほど信託報酬差(年0.4%)が手数料差を簡単に上回ります。資産500万円なら年0.4%=2万円の差で、1年でiDeCoの年間手数料を超えてしまう計算です。手数料の絶対額だけでなく、信託報酬まで含めて総コストで比べるのがポイントです。
・マッチング拠出制度がない → iDeCo併用一択
・マッチング拠出制度があり、会社の商品が低コスト → マッチング拠出が有利(手数料無料)
・会社の商品ラインナップが弱い・転職予定がある → iDeCo併用が有利
5. 2026〜2027年の改正でどう変わる?併用判断への影響
確定拠出年金は2026年から2027年にかけて大型改正が予定されており、この「どちらが得か」の判断にも大きく影響します。最新情報を押さえておきましょう。
2026年4月:マッチング拠出の上限制限が撤廃
2026年4月から、マッチング拠出の「加入者掛金は事業主掛金を超えられない」という制限が撤廃されます。これにより、事業主掛金が少ない会社でも、合計で月5.5万円の枠まで自分の掛金を大きく上乗せできるようになります。事業主掛金が低くてマッチング拠出を見送っていた人にとっては、マッチング拠出の魅力が大きく高まる改正です。
2026年12月施行(2027年1月引落分から):iDeCo上限が月6.2万円に
2026年12月1日施行(掛金の引落としは2027年1月26日分から)で、第2号被保険者(会社員・公務員)のiDeCo掛金上限が月6.2万円に大幅引き上げられます。ただし、企業型DCの事業主掛金やDB等他制度掛金相当額との合算規定は残ります。
iDeCoの掛金上限 = 月6.2万円 −(企業型DCの事業主掛金額 + DB等他制度掛金相当額)
例:事業主掛金が月5万3,000円の場合
改正前 → iDeCo拠出は不可(枠ゼロ)
改正後 → 最大9,000円までiDeCoに拠出可能
これまで事業主掛金が高くてiDeCoに出せなかった人も、改正後は枠が復活・拡大します。あわせて加入可能年齢も70歳までに拡大予定で、働きながら長く積み立てられるようになります。
改正後はどちらが得になる?
マッチング拠出の上限撤廃で「枠」の差はほぼなくなるため、改正後の判断軸はこれまで以上に「手数料」と「商品の質」に絞られます。会社の企業型DCが低コスト商品を揃えているならマッチング拠出(手数料無料)が有利、商品が物足りないなら手数料を払ってでもiDeCo併用、という構図がより鮮明になります。
※制度改正の内容・時期は今後変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省や各金融機関の公式情報をご確認ください。
6. 結局どちらを選ぶべき?タイプ別の結論
ここまでの内容を、判断しやすいように整理します。自分がどのタイプかチェックしてみてください。
- マッチング拠出制度がない会社の人:迷わずiDeCo併用。上乗せの唯一の手段です。
- 会社の運用商品が低コストで充実している人:マッチング拠出。手数料が会社負担で無駄がありません。
- 会社の商品ラインナップが弱い・信託報酬が高い人:iDeCo併用。低コスト商品を自分で選べるメリットが手数料を上回りやすい。
- 転職・退職の可能性がある人:iDeCo併用。そのまま持ち運べて手続きがシンプル。
どちらを選んでも「掛金が全額所得控除」「運用益が非課税」という税制メリットは共通です。まずは上乗せする習慣をつけることが、老後資金づくりの第一歩になります。
7. 始め方・切り替え方法
iDeCo併用を選ぶ場合は、運営管理手数料が0円の金融機関(SBI証券・楽天証券・マネックス証券など)でiDeCo口座を開設し、勤務先に「事業所登録申請書(事業主証明)」を記入してもらう必要があります。マッチング拠出を選ぶ場合は、勤務先の担当部署(人事・総務)に申し込みます。
すでに一方を利用していて他方に切り替えたい場合も、選択制のため同時には持てません。切り替えには所定の手続きと一定の期間が必要になるため、勤務先や運営管理機関に確認しましょう。運用商品の選び方や掛金の決め方は、次の関連記事も参考にしてください。
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8. よくある質問(FAQ)
Q. マッチング拠出とiDeCoは同時に両方使えますか?
A. できません。マッチング拠出とiDeCoは選択制で、どちらか一方のみ利用できます。どちらが自分に得かを比較して選ぶ必要があります。
Q. 会社にマッチング拠出制度がない場合はどうすればいいですか?
A. 上乗せして老後資金を増やしたいなら、iDeCo併用が唯一の選択肢です。勤務先の事業主証明をもらってiDeCo口座を開設すれば併用できます。
Q. 節税効果はマッチング拠出とiDeCoで違いますか?
A. 同じ掛金額なら基本的に同じです。どちらも掛金が全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になります。差がつくのは手数料・運用商品・拠出枠の部分です。
Q. 事業主掛金が高くてiDeCoに出せません。改正で変わりますか?
A. 2026年12月施行(2027年1月引落分)の改正で、iDeCoの上限が合算で月6.2万円に引き上げられます。事業主掛金が高くて枠がゼロだった人も、改正後は枠が復活・拡大する可能性があります。
9. まとめ:手数料と商品の質で「どちらが得か」を判断
企業型DC加入者の「マッチング拠出 vs iDeCo併用」は、同じ拠出額なら節税効果は同じため、最終的には「手数料」と「運用商品の質」で判断するのが正解です。
- まず会社にマッチング拠出制度があるかを確認
- なければiDeCo併用一択で老後資金の枠を広げる
- あるなら会社の運用商品の信託報酬をチェック
- 低コスト商品が揃う → 手数料無料のマッチング拠出
- 商品が弱い・転職予定あり → iDeCo併用
- 2026年12月改正でiDeCo枠が月6.2万円に拡大する点も押さえる
どちらも掛金の全額所得控除と運用益非課税という強力な税制メリットがあります。自分の会社の制度と商品を確認したうえで、より有利な方を選び、早めに老後資金の上積みを始めましょう。
※本記事は2026年6月時点の情報に基づく一般的な解説であり、特定の金融商品の購入を勧めるものではありません。制度・税制は改正される場合があります。実際の手続き・税務判断は、各金融機関や勤務先・税務署・専門家にご確認ください。


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