この記事でわかること
- 会社員の確定申告が「原則不要」な理由と仕組み
- 確定申告が「義務」になる必須ケース6パターン
- 申告すると「税金が戻ってくる」お得なケース6パターン
- 副業「20万円以下不要ルール」の正しい理解と3つの落とし穴
- 2026年・令和7年度税制改正で変わった基礎控除・扶養の壁
- 自分の状況を1分で判定できるチェックリスト
「会社員は年末調整をしてもらっているから確定申告は不要」——そう思っていませんか?
実はこれ、半分正解、半分は危険な思い込みです。
副業・医療費・ふるさと納税・住宅ローン・投資損失など、状況によっては確定申告が法的義務になるケースや、申告するだけで数万円が還付されるケースが少なくありません。
また2026年(令和7年分)の確定申告では、令和7年度税制改正による基礎控除の大幅見直しが初めて適用されます。改正前と比べて税負担の計算が変わるため、改めて自分の状況を確認する必要があります。
この記事では会社員の確定申告「不要・必要」の条件を、義務と任意に分けて完全一覧化。実際にあった誤解パターンや、2026年最新の税制改正情報も盛り込んでいます。ぜひチェックリストで自分ごとに判定してみてください。
会社員の確定申告が「原則不要」な理由
会社員(給与所得者)の多くが確定申告不要な理由は、会社が「年末調整」を代わりに行ってくれるからです。
年末調整とは、毎月の給与から天引きされている源泉徴収税額(概算の仮払い)と、実際の年間所得税額の差を精算する手続きです。扶養控除・生命保険料控除・社会保険料控除・住宅ローン控除(2年目以降)なども年末調整で反映されます。
年末調整が完了すれば、多くの会社員にとって所得税の精算は終了。個人が改めて税務署に確定申告する必要はありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年末調整の対象 | 1か所から給与を受け、年収2,000万円以下の会社員 |
| 年末調整で処理される主な控除 | 扶養控除・配偶者控除・生命保険料控除・社会保険料控除・住宅ローン控除(2年目以降)など |
| 年末調整で処理できない控除 | 医療費控除・雑損控除・寄附金控除・特定支出控除・住宅ローン控除(初年度)など |
| 確定申告の要否 | 上記以外の事情がなければ原則不要 |
ポイントは「年末調整ですべての控除が処理できるわけではない」点。年末調整でカバーされない控除を受けたい場合や、特定の所得がある場合は確定申告が必要または有益になります。
【必須】確定申告が「義務」になる会社員のケース6選
以下に該当する場合は、法律上の義務として確定申告をしなければなりません。申告期限(原則3月15日)を過ぎると「無申告加算税」や「延滞税」のペナルティが発生する可能性があります。
① 給与の年収が2,000万円を超える
給与年収が2,000万円超の人は年末調整の対象外となり、確定申告が必須です(所得税法第121条)。高収入の会社員・役員・外資系企業勤務者などが対象になります。
② 副業・雑所得などが年間20万円を超える
給与以外の所得(副業収入・フリマ収入・アフィリエイト・講演料・原稿料など)の合計が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。
「20万円」は収入ではなく所得(収入-必要経費)である点に注意が必要です。また「20万円以下なら不要」は所得税に限ったルールで、住民税は別途申告が必要です(後述の落とし穴参照)。
副業の確定申告ルールの詳細は副業の確定申告は20万円以下なら不要?必要なケース・不要なケースを解説で詳しく解説しています。
③ 2か所以上から給与を受けている(ダブルワーク等)
本業と副業の両方で「給与」として収入を受け取っている場合(副業先がアルバイト形式など)、年末調整されていない給与の収入金額と他の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。
例:本業A社で年末調整済み+B社から副業給与50万円を受け取った場合→B社分の確定申告が必要
④ 年の途中で退職し、年末調整を受けていない
年の途中で退職し、同年内に再就職しなかった場合(または転職先で年末調整を受けなかった場合)は、毎月天引きされていた源泉徴収税が過剰に引かれたままになっています。
この場合、確定申告をすることで税金の還付が受けられることがほとんどです。手続きしないと「払いすぎた税金が戻らない」まま損する可能性があります。
⑤ 住宅ローン控除を受ける最初の年(初年度のみ)
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は勤務先の年末調整で処理できます。新築・中古住宅の購入やリフォームローンを組んだ人は必ず確認しましょう。
住宅ローン控除の確定申告手順は住宅ローン控除 確定申告のやり方(初年度)で詳しく解説しています。
⑥ 雑損控除を受ける(災害・盗難・横領)
台風・地震・洪水などの自然災害や盗難・横領により財産に損害を受けた場合は雑損控除が受けられますが、年末調整では処理できないため確定申告が必要です。
【任意】申告すると「お金が戻ってくる」ケース6選
以下のケースは法的な義務ではありませんが、確定申告(還付申告)をすることで払い過ぎた所得税が戻ってきます。還付申告は通常の確定申告期間(2〜3月)に関係なく、翌年1月から5年間遡って申告可能です。
① 医療費控除(年間医療費が10万円超)
1月〜12月に支払った医療費の合計が10万円(または年間所得の5%)を超えた場合、超えた分が所得から控除されます。本人だけでなく生計を共にする家族全員分の医療費を合算できます。
病院代・薬代・通院交通費・入院費用などが対象です。美容目的の費用や予防接種(一部を除く)は対象外。
→ 医療費控除の対象・計算方法は医療費控除はいくらから申請できる?計算方法・還付額・対象一覧を完全解説で詳しく解説。
② ふるさと納税(6か所以上の自治体に寄付)
ふるさと納税のワンストップ特例制度は5自治体以内かつ確定申告不要の給与所得者が対象です。6か所以上に寄付した場合や、他の事情で確定申告が必要な方は確定申告でふるさと納税の控除を申請します。
→ ワンストップ特例 vs 確定申告の選び方はふるさと納税はワンストップ特例と確定申告どちらがいい?で解説。また年収別の上限額はふるさと納税の上限額を年収・家族構成別に早見表で解説【2026年版】も参考にどうぞ。
③ セルフメディケーション税制(市販薬12,000円超)
医療費控除の特例として、特定の市販薬(スイッチOTC薬)の購入額が年間12,000円を超えた場合に控除が受けられます。医療費控除(10万円ハードル)より適用しやすく、健康診断などの受診実績が条件です。医療費控除とはどちらか一方を選択します。
④ 株式・投資信託の損失(損益通算・繰越控除)
株式や投資信託の売却損(譲渡損失)は、他の口座の配当・売却益と損益通算することで課税所得を減らせます。また損失を翌年以降3年間繰り越す「繰越控除」も確定申告で申請できます。
特定口座「源泉徴収あり」を選んでいる場合でも、損失がある年は確定申告で取り戻せる税金がある場合があります。
→ 詳しくは株式投資の確定申告|損益通算・繰越控除のやり方と節税シミュレーションで解説。
⑤ 特定支出控除(業務関連費が給与所得控除の1/2超)
通勤費・転居費・研修費・資格取得費・書籍費・衣服費・交際費などの特定支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超えた場合、超えた分が追加控除されます。会社からの証明書が必要ですが、高額の資格取得費や業務上の自費出費が多かった年に有効です。
⑥ 認定NPO・公益法人への寄附金控除
国・地方公共団体・認定NPO法人・公益社団法人などへの寄附金は寄附金控除の対象です。ふるさと納税もこの一種ですが、それ以外の寄附を行った場合は確定申告で申請します。
副業の「20万円ルール」の正しい理解と3つの落とし穴
「副業収入が20万円以下なら確定申告は不要」という話は広く知られています。しかし誤解したまま適用すると、後から追徴課税や加算税のリスクがあります。3つの落とし穴を確認しておきましょう。
落とし穴① 所得税は不要でも「住民税の申告は必要」
所得税の確定申告が不要でも、住民税(市区町村民税)の申告は別途必要な場合があります。副業収入が1円でも所得がある場合は、居住地の市区町村に住民税の申告をしなければなりません。
ただし確定申告(所得税)を行えば、住民税の申告を兼ねることができます。「20万円以下だから何もしなくていい」という誤解が最も危険です。
落とし穴② 「20万円」は収入ではなく所得(収入-経費)
副業で確定申告が不要な「20万円」は、必要経費を差し引いた後の「所得」です。収入そのものではありません。
| ケース | 副業収入 | 必要経費 | 副業所得 | 所得税の申告義務 |
|---|---|---|---|---|
| ライターA | 30万円 | PC・通信費15万円 | 15万円 | 不要(20万円以下) |
| ライターB | 22万円 | 経費ほぼなし | 22万円 | 必要(20万円超) |
| メルカリC | 25万円 | 仕入・送料20万円 | 5万円 | 不要(20万円以下) |
落とし穴③ 複数副業の所得は「合計」で判定する
メルカリ・ライター・アフィリエイト・動画編集など複数の副業を掛け持ちしている場合、それぞれの所得を合計して20万円を超えるかどうかで判定します。1つ1つが少額でも合計すると20万円を超えるケースは要注意です。
【2026年最新】令和7年度税制改正で変わった3つのポイント
2026年(令和7年分)の確定申告では、令和7年度税制改正による所得税の大幅見直しが初めて適用されます。会社員にも直接影響する重要な変更点を確認しましょう。
① 基礎控除が所得段階別に大幅引き上げ(最大95万円)
改正前は一律48万円だった基礎控除が、合計所得金額に応じた段階制に変わりました。低・中所得層ほど控除額が大きく増加しています。
| 合計所得金額 | 改正前(令和6年分まで) | 改正後(令和7年分〜) |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 48万円 | 88万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 48万円 | 68万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 48万円 | 63万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 |
| 2,350万円超〜2,400万円以下 | 32万円 | 32万円 |
| 2,400万円超 | 段階的に0円 | 段階的に0円 |
※ 2,350万円以下の部分の改正は令和7年・令和8年の2年間限定。令和9年以降は合計所得655万円超の基礎控除が一律58万円になる予定。
② 給与所得控除の最低保障額が65万円に引き上げ
給与所得控除の最低保障額が55万円→65万円に引き上げられました。これにより、給与年収160万円以下(=給与所得控除65万円+基礎控除95万円)の方は所得税が0円となります。
なお確定申告をしても税額がゼロのため、給与年収160万円以下の方は還付申告の実益はありません(医療費控除・損失繰越など特別な場合は除く)。
③ 扶養の壁が103万円→123万円に引き上げ
扶養控除・配偶者控除を受けられる「年収の壁」が103万円→123万円に引き上げられました。配偶者やアルバイトをしている扶養家族の収入が年収123万円以下であれば、本人は満額の扶養控除(38万円)を受けることができます。
計算式:給与所得控除65万円+基礎控除58万円=123万円(以下なら扶養の範囲内)
なお令和8年度(2026年分)税制改正では、扶養の壁がさらに136万円に引き上げられる予定です。
これらの改正を踏まえた節税対策全体像は税金対策で手取りを増やす!会社員がやるべき5つの節税方法、複数の控除を組み合わせた節税は節税の合わせ技完全攻略|ふるさと納税×医療費控除×住宅ローン控除を同時活用もご参考ください。
確定申告をしないとどうなる?ペナルティの種類
「面倒だからやらなくていいか」と無申告のまま放置すると、後からペナルティが課される可能性があります。主なペナルティは以下の通りです。
| ペナルティの種類 | 概要 | 税率目安 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 申告期限を過ぎて申告した場合 | 本税の15〜20%(税務調査後は30%) |
| 延滞税 | 納税期限を過ぎた分の利息 | 年7.3〜14.6%程度 |
| 重加算税 | 意図的な所得隠し・仮装が認定された場合 | 本税の35〜40% |
なお、申告義務があるにもかかわらず申告しなかった場合、税務署から「お尋ね」が届いたり、税務調査が入ることがあります。副業収入は会社間の支払いデータや金融機関情報から把握されるケースがあります。
一方、還付申告(任意申告)は申告しなくてもペナルティはありませんが、申告しないと還付金を受け取れないまま期限(5年)が過ぎてしまいます。
よくある質問Q&A
Q. 会社員で株式投資をしているが確定申告は必要?
A. 口座の種類によって異なります。
特定口座(源泉徴収あり)を選んでいる場合は、売却益や配当に対する税金が自動的に源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。ただし、複数口座での損益通算や損失繰越控除を受けたい場合は確定申告が有利になります。
特定口座(源泉徴収なし)や一般口座の場合は、年間の利益が一定額を超えると確定申告が必要です。
→ 詳しくは特定口座「源泉徴収あり・なし」どちらを選ぶ?会社員向け完全判断ガイドを参照。
Q. 年末調整で生命保険料控除を申告し忘れた。確定申告で修正できる?
A. 確定申告で修正できます。
年末調整で控除し忘れた生命保険料控除・地震保険料控除・小規模企業共済等掛金控除などは、確定申告で申告することで還付が受けられます。還付申告は申告期限(3月15日)後も5年間遡って申告可能です。
Q. ふるさと納税のワンストップ特例を申請したが、確定申告が必要になった。どうすればいい?
A. 確定申告でふるさと納税の控除も一緒に申告してください。
ワンストップ特例申請済みでも、その後に確定申告が必要になった場合は、確定申告書にふるさと納税の寄付金額も記載して申告します。確定申告をすると自動的にワンストップ特例の申請は無効になるため、忘れずにすべての寄付先を確定申告書に記載してください。
Q. 副業の確定申告を5年前分から遡れる?
A. 申告の種類によって異なります。
・還付申告(税金が戻ってくるケース):申告期限から5年間遡れる
・義務申告(税金を納める必要があるケース):5年以内なら申告可能だが、無申告加算税・延滞税が発生する場合あり
・重加算税の対象(意図的な隠ぺいと認定):7年間遡及調査される場合あり
自分に確定申告が必要か判定できるチェックリスト
以下のチェックリストで今年の確定申告の要否を判定してください。
【必須】1つでも当てはまれば確定申告が義務
- ☐ 給与の年収が2,000万円を超えている
- ☐ 副業・フリマ・投資など給与以外の所得の合計が年間20万円を超えている
- ☐ 本業以外の勤務先から給与をもらっており、その金額+他の所得が20万円超
- ☐ 年の途中で退職し、同年中に年末調整を受けていない(※還付を受けるためにも申告を)
- ☐ 住宅ローン控除を初めて受ける(今年が初年度)
- ☐ 台風・地震・盗難などで財産に損害を受け、雑損控除を受けたい
【任意・お得】1つでも当てはまれば申告を検討
- ☐ 1年間の医療費(家族合算)が10万円を超えた
- ☐ ふるさと納税の寄付先が6か所以上、またはワンストップ特例を未申請
- ☐ 特定の市販薬の購入額が年間12,000円を超えた(セルフメディケーション税制)
- ☐ 株式・投資信託の売却損がある(損益通算・3年繰越控除の活用)
- ☐ 業務関連の自費支出(資格取得・書籍・研修等)が多かった
- ☐ 認定NPOや公益法人に寄附した
- ☐ 年末調整で生命保険料控除などを申告し忘れた
【注意】確定申告は不要だが住民税申告が必要なケース
- ☐ 副業などの所得が20万円以下あるが、ゼロではない(→市区町村への住民税申告が必要)
2026年(令和7年分)確定申告の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告対象年度 | 令和7年(2025年)1月1日〜12月31日の所得 |
| 申告・納税期間 | 令和8年(2026年)2月16日(月)〜3月16日(月) |
| 還付申告(任意)の有効期限 | 令和12年(2030年)3月16日まで(5年間) |
| 申告方法 | e-Tax(スマホ・PC)、税務署窓口、郵送 |
| 必要書類の例 | 源泉徴収票、各種控除証明書、マイナンバー確認書類、医療費明細など |
| 基礎控除(改正後) | 合計所得132万円以下は95万円。以降は段階的に減少 |
| 扶養の壁(改正後) | 年収123万円以下(改正前:103万円以下) |
まとめ:会社員の確定申告「不要・必要」早わかり
会社員の確定申告について、要点をまとめます。
- 原則不要:年末調整済みで給与収入2,000万円以下、副業所得20万円以下
- 義務(必須6ケース):給与2,000万円超・副業20万円超・ダブルワーク・年途中退職・住宅ローン初年度・雑損控除
- 任意(お得7ケース):医療費10万円超・ふるさと納税6か所以上・株式損失繰越・セルフメディケーション・特定支出控除・寄附金・控除申告漏れ
- 落とし穴:副業所得20万円以下でも住民税の申告は必要/20万円は所得(経費控除後)/複数副業は合計で判定
- 2026年新制度:基礎控除が最大95万円に引き上げ・給与所得控除の最低保障65万円・扶養の壁が123万円に変更
「自分には関係ない」と思っていた方も、ぜひ一度チェックリストで確認してみてください。申告の手間より数万円の還付を得られる可能性があります。特に医療費が多かった年、投資で損失が出た年、退職や転職をした年は要チェックです。
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