年金を70歳まで繰り下げるといくら増える?シミュレーションと損益分岐点【2026年度版】

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「年金を70歳まで繰り下げると、本当にどれくらい増えるのか?」「損益分岐点の82歳まで生きなければ損なの?」——こんな疑問を持つ方は多いでしょう。

年金の70歳繰り下げは受給額が42%増額され、老後の収入を大きく底上げできる強力な制度です。ただし、税金・社会保険料の影響や加給年金の失権など、見落としがちな落とし穴もあります。

この記事では、2026年度の最新年金額をもとに、ケース別の詳細シミュレーション・手取りベースの試算・手続き方法まで徹底解説します。

この記事のポイント

  • 70歳繰り下げで年金が42%増額(月0.7%×60ヶ月)
  • 損益分岐点は約81歳10ヶ月〜82歳(額面ベース)
  • 手取りベースでは増額分の約1割が税・社会保険料で目減り
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げ可能
  • 加給年金がある場合は5年間で最大約212万円の損失(42.4万円×5年)に注意
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1. 年金の70歳繰り下げとは?基本ルールを整理

公的年金の受給開始は原則65歳ですが、66歳〜75歳の間で1ヶ月単位で遅らせることができます。これが「繰り下げ受給」です。

項目 内容
繰り下げ可能な年齢 66歳〜75歳(1ヶ月単位で選択)
増額率の計算 月0.7% × 繰り下げ月数
70歳まで繰り下げた場合の増額率 +42.0%(0.7%×60ヶ月)
増額は一生涯続くか はい。一度決めたら変更不可
老齢基礎年金と老齢厚生年金 別々に繰り下げ可能
昭和27年4月1日以前生まれ 上限は70歳(改正前の制度が適用)

70歳繰り下げを選ぶと、65〜70歳の5年間は年金ゼロ。その間の生活費を別途用意できる方が対象になります。

2. 2026年度の年金額と70歳繰り下げ後の受給額

2026年度の最新年金額をもとに、70歳繰り下げ後の受給額を計算します。

年金の種類 65歳開始(月額) 70歳開始(+42%) 月額増加分
老齢基礎年金(国民年金・満額) 70,608円 100,263円 +29,655円
厚生年金(月15万円のモデル) 150,000円 213,000円 +63,000円
モデル世帯合計(会社員夫+専業主婦妻) 237,279円 336,936円 +99,657円
厚生年金(男性平均・月17万円) 170,000円 241,400円 +71,400円

70歳繰り下げによって月額は大幅に増えますが、65〜70歳の5年間(60ヶ月)は受け取れないため、その間の生活費をどう確保するかが最大の課題です。

3. ケース別・70歳繰り下げシミュレーション

実際の数字で70歳繰り下げの効果を確認しましょう。

ケース①:国民年金のみ(自営業・フリーランス)

65歳時点での老齢基礎年金が満額の月70,608円(年846,096円)の場合

65歳開始の月額 70,608円
70歳開始の月額(+42%) 100,263円
65〜70歳の5年間で受け取れなかった累計額 4,236,480円
月額の増加分 +29,655円/月
損益分岐点(65歳比) 約81歳11ヶ月
85歳時点の累計差額 70歳開始が約+354万円多い

ケース②:厚生年金(月15万円・モデル)

65歳開始の月額 150,000円
70歳開始の月額(+42%) 213,000円
65〜70歳の5年間で受け取れなかった累計額 9,000,000円
月額の増加分 +63,000円/月
損益分岐点(65歳比) 約81歳10ヶ月
85歳時点の累計差額 70歳開始が約+226万円多い
90歳時点の累計差額 70歳開始が約+604万円多い

ケース③:夫婦世帯(会社員夫+専業主婦妻・合計月23.7万円)

夫の老齢厚生年金のみ70歳まで繰り下げ、妻の老齢基礎年金は65歳から受給するケース

夫の65歳時点の月額(老齢厚生年金+老齢基礎年金) 約169,700円
夫の70歳繰り下げ後月額(+42%) 約240,974円
妻の65歳時点の月額(老齢基礎年金) 約67,579円
夫70歳以降の世帯月額合計 約308,553円
65歳両方受給に比べた月額増加 +71,274円/月

夫のみ繰り下げるパターンでは、妻が65〜70歳の間も自身の年金(老齢基礎年金)を受け取りながら、夫の繰り下げ期間を乗り越えられます。

4. 「手取りベース」での実質的な増額効果

年金の増額はあくまで「額面」です。実際には税金・社会保険料の影響で手取りはそれより少なくなります。

額面 vs 手取りの比較(年金月15万円→70歳繰り下げ後月21.3万円のケース)

項目 65歳開始(年額) 70歳開始(年額)
年金額(額面) 180万円 255.6万円
所得税・住民税(概算) 約2〜3万円 約5〜8万円
健康保険・介護保険料(概算) 約10〜15万円 約15〜22万円
手取り(概算) 約162〜168万円 約225〜236万円
手取りの増加額(70歳−65歳) 約57〜73万円/年(月換算:約4.8〜6.1万円)
注意点:手取りベースの損益分岐点は「額面」より遅くなる
税金・社会保険料の負担増により、手取りベースの損益分岐点は額面の81歳10ヶ月より数ヶ月〜1年程度遅くなります。個人の所得状況や扶養家族の有無によって異なるため、ねんきん定期便の数値をもとに個別に試算することをおすすめします。

5. 「国民年金と厚生年金を別々に繰り下げる」戦略

多くの方が知らない重要な制度として、老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金は別々に繰り下げられます。これを活用すると、加給年金や振替加算との関係で有利になるケースがあります。

戦略パターン 内容 向いているケース
両方とも70歳まで繰り下げ 老齢基礎年金・老齢厚生年金ともに70歳受給開始 加給年金なし・健康・収入源ある
老齢厚生年金のみ繰り下げ 老齢厚生年金のみ70歳まで繰り下げ、老齢基礎年金は65歳から受給 加給年金受給者・振替加算あり
老齢基礎年金のみ繰り下げ 老齢基礎年金のみ70歳まで繰り下げ、老齢厚生年金は65歳から受給 在職老齢年金で厚生年金が減額される方
加給年金がある方は要注意!
配偶者(65歳未満)がいる場合に付く「加給年金」(年間約42.4万円・2026年度)は、老齢厚生年金を繰り下げている間は受け取れません。5年間繰り下げると約212万円の加給年金を失う(42.4万円×5年)ことになります。この場合は「老齢基礎年金のみ繰り下げ」または「繰り下げを断念する」が賢明です。

6. 70歳繰り下げで「大損する人」の特徴

70歳繰り下げが必ずしも有利とは言えないケースがあります。事前に確認しましょう。

①配偶者への加給年金がある人

前述のとおり、老齢厚生年金を繰り下げると加給年金(年約42.4万円・2026年度)が5年間受け取れず、損失額は約212万円(42.4万円×5年)と大きくなります。

②健康に不安があり、早期に亡くなるリスクが高い人

損益分岐点の約82歳より前に亡くなると、65歳から受け取り始めた方が累計受給額が多くなります。家族歴や健康診断の結果なども考慮してください。

③在職老齢年金で年金が全額カットされる人

65〜69歳も厚生年金に加入して働き、年金が在職老齢年金で全額カットされている場合、繰り下げしても「増額の対象になるのは実際に受け取れた分だけ」になります(支給停止分は繰り下げ増額の計算に含まれない)。

④65〜70歳の生活費を確保できない人

65〜70歳の5年間の生活費(年300万円×5年=1,500万円程度)を年金以外でカバーできる貯蓄・収入がない場合、繰り下げは現実的ではありません。

⑤遺族年金に依存する配偶者がいる人

本人が亡くなった後に配偶者が受け取る遺族厚生年金は、繰り下げによって増額されません。配偶者が年金収入に強く依存する場合は、長生きリスクより配偶者の生活保障を優先すべきケースもあります。

7. 70歳繰り下げが有利な人の特徴

  • 健康状態が良く、長生きが期待できる(男性なら82歳、女性なら85歳以上の見込み)
  • 65〜70歳も就労し、収入がある(退職金・iDeCo・新NISA取り崩しで生活費をカバーできる)
  • 加給年金が付いていない
  • 遺族年金への依存が少ない(配偶者も自身の年金がある共働き世帯など)
  • 長寿リスクに備えたい(90歳・95歳まで生きた場合の収入を手厚くしたい)
70歳繰り下げ×資産形成の最強コンビ
65〜70歳の5年間を「新NISA・高配当株の配当収入・退職金」でカバーしながら年金を繰り下げれば、70歳以降は増額した年金+資産収入のダブルインカムで老後の安心を確保できます。

8. 繰り下げ受給の手続き方法

70歳繰り下げの手続きは意外とシンプルです。

STEP1:65歳になっても年金を請求しない

65歳になると日本年金機構から「年金請求書」が届きます。繰り下げを希望する場合は、この時点で請求しないだけでOK。何もしなければ繰り下げ状態になります。

STEP2:ねんきんネットで受給見込み額を確認する

ねんきんネット(日本年金機構の公式サービス)にログインすると、繰り下げた場合の受給見込み額をシミュレーションできます。スマートフォンからも確認可能です。

STEP3:70歳になったら年金事務所へ請求

70歳の誕生月以降に最寄りの年金事務所へ「老齢年金請求書(繰り下げ申出書)」を提出します。

必要書類 備考
老齢年金請求書(繰り下げ申出書) 年金事務所で入手または郵送で取り寄せ
戸籍謄(抄)本または住民票 発行から6ヶ月以内のもの
基礎年金番号通知書またはマイナンバーカード 本人確認に使用
振込先金融機関の通帳(またはキャッシュカード) 受取口座の確認

注意:75歳を超えてから請求する場合の「みなし繰り下げ」

2023年4月の改正で、75歳を超えて繰り下げ請求する場合に「みなし繰り下げ制度」が適用されます。70歳時点まで遡って繰り下げ増額した年金を一括で受け取るか、70歳時点からの増額を選ぶかが選択できます(ただし75歳以降はこの制度は利用不可)。

9. 65歳・70歳・75歳の長期累計受給額を比較

国民年金満額(月70,608円)を基準に、各受給開始年齢で90歳まで生きた場合の累計受給額を比較します。

受給開始年齢 月額 80歳までの累計 85歳までの累計 90歳までの累計
65歳 70,608円 約1,271万円 約1,695万円 約2,118万円
70歳(+42%) 100,263円 約1,203万円 約1,806万円 約2,406万円
75歳(+84%) 129,918円 約779万円 約1,559万円 約2,339万円

70歳繰り下げは82歳を境に65歳開始を上回り、85歳では111万円・90歳では288万円のリードになります。女性の平均寿命(87歳)まで生きた場合、70歳繰り下げが65歳開始より累計で有利です。

まとめ:70歳繰り下げは「長寿・健康・収入源あり」の方の最強戦略

項目 内容
増額率 +42%(月0.7%×60ヶ月)一生涯固定
損益分岐点(額面) 約81歳10ヶ月〜82歳
手取りベースの損益分岐点 82〜83歳程度(税・社保の増加分を考慮)
最大のリスク 加給年金の喪失・早期死亡・収入源のなさ
最大のメリット 長寿リスクへの最強ヘッジ・月収入の大幅アップ
国民年金と厚生年金 別々に繰り下げ可能(戦略的に使い分けできる)

70歳繰り下げは「絶対に有利」ではなく、自分の健康状態・収入源・家族構成・加給年金の有無を総合的に判断する必要があります。まずはねんきん定期便やねんきんネットで自分の年金見込み額を確認し、繰り下げた場合のシミュレーションを行うことから始めましょう。

65〜70歳の繰り下げ期間中の生活費は「退職金の運用益・新NISAの取り崩し・高配当株の配当収入」で補うのが最も効率的です。詳しくは「退職金の運用おすすめ方法5選|失敗しない3分割戦略と2026年最新ポートフォリオ」もご参考ください。

繰り下げ期間中の生活費を確保するには

70歳繰り下げを実現するカギは、65〜70歳の5年間の生活費(約1,500万円)を年金以外でカバーすること。今から準備できる3つの方法:

  • iDeCo:60歳以降に受け取れる老後資金を積み立て(掛金全額所得控除)
  • 新NISA:積み上げた資産を65〜70歳に取り崩す(4%ルールで取り崩し)
  • 高配当株・ETF:毎月入る配当収入で生活費の一部をカバー

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