退職金の税金を徹底解説|一時金vs年金どちらが有利か【2026年10年ルール対応】

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退職金はサラリーマン人生最大の「一発収入」です。しかし受け取り方を間違えると、数十万〜数百万円の税金を余分に支払う羽目になります。特に2026年1月から「10年ルール」に改正された退職所得控除の新ルールを知らないまま受け取ると、iDeCoや企業型DCとの兼ね合いで大きな損が生じる場合があります。

本記事では、退職金の税金計算の仕組みから「一時金と年金はどちらが有利か」の比較、2026年改正の10年ルールの影響まで、具体的なシミュレーション数字を交えて解説します。定年を迎える前に必ず確認しておきましょう。

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  1. 退職金には3種類の受け取り方がある
  2. 一時金で受け取る場合の税金計算|退職所得控除の仕組み
    1. 退職所得控除額の計算式
    2. 退職所得の計算ステップ
  3. 勤続年数別シミュレーション|退職金2,000万円の場合
    1. ケース①:勤続30年の場合
    2. ケース②:勤続35年の場合
    3. ケース③:勤続40年の場合
    4. 勤続年数別・退職所得控除額の早見表
  4. 年金で受け取る場合の税金|雑所得として総合課税される
    1. 公的年金等控除の計算(65歳以上の場合)
    2. 年金受取の2つのデメリット
  5. 一時金 vs 年金 税負担の比較シミュレーション
  6. 【2026年重要改正】10年ルールとiDeCo・企業型DCへの影響
    1. 10年ルールとは?
    2. 具体的な影響シミュレーション
    3. 10年ルール対応の3つの戦略
  7. iDeCo・企業型DCの受取方法別・税金の比較
  8. 退職金の税金をできるだけ減らす5つのポイント
    1. ①基本は一時金受取が有利
    2. ②iDeCo・DC受取は10年ルールを必ず確認
    3. ③退職所得は翌年度の社会保険料に影響しない
    4. ④住民税は翌年1月1日の居住地で課税される
    5. ⑤退職所得の確定申告は基本不要だが例外あり
  9. 退職金の受取戦略|年代別シナリオ例
    1. シナリオA:60歳定年・iDeCoなし
    2. シナリオB:60歳定年・iDeCo加入あり(10年ルール対応)
    3. シナリオC:65歳まで再雇用・退職金は65歳受取
  10. 退職金受取の注意点まとめ|チェックリスト
  11. まとめ|退職金は「受け取り方」で手取りが数十万〜数百万円変わる

退職金には3種類の受け取り方がある

退職金の受け取り方は大きく3つに分かれます。それぞれ適用される税制がまったく異なるため、まず全体像を把握することが重要です。

受け取り方課税区分適用される控除税の有利度
①一時金(一括受取)退職所得退職所得控除+1/2課税◎ 最も有利なケースが多い
②年金(分割受取)雑所得公的年金等控除△ 他の所得と合算・社会保険料にも影響
③一時金+年金の併用両方適用両方の控除を部分的に活用○ バランス型

一般的に一時金受取が税制上最も有利ですが、退職後の生活設計や他の収入との兼ね合いによっては年金受取が適切な場合もあります。以下で詳しく解説します。

一時金で受け取る場合の税金計算|退職所得控除の仕組み

退職金を一時金で受け取ると「退職所得」として課税されます。退職所得には2つの大きな優遇があります。

  • 退職所得控除:勤続年数に応じた大きな控除額が差し引かれる
  • 1/2課税:控除後の金額をさらに1/2にしてから税率を掛ける

退職所得控除額の計算式

勤続年数退職所得控除額の計算式
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

※勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り上げて計算します。

退職所得の計算ステップ

退職所得は以下の3ステップで計算します。

STEP 1:退職所得控除額を計算する
STEP 2:課税退職所得金額 =(退職金の収入 − 退職所得控除額)× 1/2
STEP 3:課税退職所得金額に所得税の税率を掛ける(2.1%の復興特別所得税を加算)

勤続年数別シミュレーション|退職金2,000万円の場合

退職金2,000万円を一時金で受け取った場合の税負担を、勤続年数別に計算します。

ケース①:勤続30年の場合

退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円
課税退職所得:(2,000万円 − 1,500万円)× 1/2 = 250万円

税の種類計算税額
所得税(税率10%・控除97,500円)250万円 × 10% − 97,500円152,500円
復興特別所得税(2.1%)152,500円 × 2.1%3,202円
住民税(税率10%)250万円 × 10%250,000円
合計税額約405,700円
手取り金額約1,959万4,300円

ケース②:勤続35年の場合

退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(35年 − 20年)= 1,850万円
課税退職所得:(2,000万円 − 1,850万円)× 1/2 = 75万円

税の種類計算税額
所得税(税率5%)75万円 × 5%37,500円
復興特別所得税37,500円 × 2.1%787円
住民税(税率10%)75万円 × 10%75,000円
合計税額約113,287円
手取り金額約1,988万6,713円

ケース③:勤続40年の場合

退職所得控除額:800万円 + 70万円 ×(40年 − 20年)= 2,200万円
課税退職所得:(2,000万円 − 2,200万円)× 1/2 → 控除額が退職金を上回るため0円

勤続40年で退職金2,000万円なら、税金はゼロ。手取りはそのまま2,000万円になります。長く勤めるほど退職所得控除が手厚くなる仕組みです。

勤続年数別・退職所得控除額の早見表

勤続年数退職所得控除額退職金2,000万円の場合の課税退職所得
10年400万円800万円
15年600万円700万円
20年800万円600万円
25年1,150万円425万円
30年1,500万円250万円
35年1,850万円75万円
40年2,200万円0円(非課税)

年金で受け取る場合の税金|雑所得として総合課税される

退職金を年金形式で受け取ると「雑所得」として扱われ、公的年金(老齢年金)と合算して課税されます。

公的年金等控除の計算(65歳以上の場合)

年金収入(65歳以上)公的年金等控除額
110万円以下110万円(実質非課税)
110万円超〜330万円未満110万円
330万円以上〜410万円未満収入 × 25% + 27.5万円
410万円以上〜770万円未満収入 × 15% + 68.5万円
770万円以上〜1,000万円未満収入 × 5% + 145.5万円
1,000万円以上195.5万円(上限)

65歳以上で年金収入が110万円以下なら雑所得がゼロになりますが、老齢年金(平均的な厚生年金:月16〜18万円=年192〜216万円)と企業の年金を合算すると、多くの場合110万円を大幅に超えます。

年金受取の2つのデメリット

  • 社会保険料(国民健康保険・介護保険)が増加:年金形式の雑所得は国民健康保険料や後期高齢者医療保険料・介護保険料の算定基礎に含まれるため、保険料が上がる可能性がある
  • 総合課税で高い税率が適用されるリスク:公的年金や他の所得と合算されるため、税率が上がりやすい。特に再就職で給与収入がある場合は注意

一時金 vs 年金 税負担の比較シミュレーション

勤続30年・退職金2,000万円を「一時金」と「20年間の年金(年100万円)」で受け取った場合の税負担を比べます。

比較項目一時金受取年金受取(年100万円×20年)
適用される控除退職所得控除1,500万円+1/2課税公的年金等控除110万円(65歳以上)
課税所得250万円0円(老齢年金との合算なしの場合)〜多額
所得税+住民税(概算)約405,700円(合計)老齢年金との合算により年数万〜十数万円
社会保険料への影響なし(退職所得は算定除外)あり(雑所得として算定対象)
受取総額(税引前)2,000万円2,000万円(同額)
手取りの有利度◎ 税負担が少ない場合が多い△ 運用次第では優位の場合も

ただし年金受取にも「長生きリスクへの備え」「計画的な取り崩しが不要」というメリットがあります。一概に一時金が良いとは言い切れず、退職後の生活スタイルや他の収入とのバランスで判断が必要です。

【2026年重要改正】10年ルールとiDeCo・企業型DCへの影響

2026年1月1日以降の退職金受取から、「5年ルール」が「10年ルール」に延長されました。iDeCoや企業型DC(確定拠出年金)を一時金で受け取る予定がある人は必ず把握してください。

10年ルールとは?

退職所得控除は「ひとつの一時金受取」に対して1回適用されるのが原則です。しかし、複数の退職金(会社の退職金とiDeCoなど)を短期間に一時金で受け取ると、後から受け取る側の退職所得控除が制限されます。

改正前(〜2025年)改正後(2026年1月〜)
調整される期間5年以内10年以内
例:iDeCo一時金を先に受取5年超空ければ退職金に影響なし10年超空けないと退職金の控除が減額

具体的な影響シミュレーション

【ケース】勤続38年・退職金2,000万円、iDeCo運用残高400万円(iDeCo加入20年)

パターンA:iDeCoを2026年1月に一時金受取 → 会社退職金を2029年(3年後)に受取
→ 10年以内の受取のため、退職金側の退職所得控除がiDeCo加入期間(20年)分だけ減額
→ 退職所得控除:2,200万円 − 800万円(iDeCoの20年分)= 1,400万円に縮小
→ 課税退職所得:(2,000万 − 1,400万)× 1/2 = 300万円
→ 税負担が大幅増加

パターンB:iDeCoを2026年1月に一時金受取 → 会社退職金を2036年(10年後)に受取
→ 10年超の間隔があるため、退職金の退職所得控除は満額2,200万円が適用
→ 課税退職所得:(2,000万 − 2,200万)× 1/2 = 0円(非課税)

パターンAとBの差はゼロ対数十万円以上。受取の順番と間隔で手取りが大きく変わることがわかります。

10年ルール対応の3つの戦略

  • 戦略①:10年以上の間隔を空ける|最もシンプル。定年前後にiDeCoを受け取り、会社退職金は10年後(70歳前後)に受け取る計画を立てる
  • 戦略②:どちらか一方を年金形式にする|iDeCoを年金受取にすれば退職所得控除への影響を回避できる(ただし雑所得課税になる点に注意)
  • 戦略③:受取順序を逆にする|会社退職金を先に一時金で受け取り、iDeCoを後から受け取る場合も「19年ルール」(後から受け取る側の勤続年数で再計算)が適用されるので要確認

→ iDeCoの制度詳細と2026年改正についてはiDeCo 2026年12月改正|掛金上限引き上げの全ポイント解説もあわせてご確認ください。

iDeCo・企業型DCの受取方法別・税金の比較

iDeCoや企業型DCの受取方法を整理します。会社退職金と組み合わせてどう受け取るかで、手取り総額が大きく変わります。

受取方法課税区分メリットデメリット・注意点
一時金(一括)退職所得退職所得控除+1/2課税で税負担が軽い10年ルールに注意。会社退職金との間隔管理が必要
年金(分割)雑所得公的年金との合算で110万円以下なら非課税社会保険料に影響。老齢年金と合算で課税所得が増える
一時金+年金の併用両方退職所得控除と公的年金等控除を両方活用割合の選択が複雑。運用会社・制度によって分割比率が決まる

→ iDeCoの節税効果と年収別シミュレーションはiDeCo節税シミュレーション|年収別の具体的な計算例をご参照ください。

退職金の税金をできるだけ減らす5つのポイント

①基本は一時金受取が有利

勤続年数が長いほど退職所得控除が手厚くなり、1/2課税との相乗効果で税負担が大幅に軽減されます。年金受取との比較では、社会保険料への影響も含めると多くのケースで一時金の方が手取りが多くなります。

②iDeCo・DC受取は10年ルールを必ず確認

2026年から10年ルールが施行されています。会社退職金とiDeCo・企業型DCを両方一時金で受け取る場合は、受取の間隔と順序を必ず確認・計画しましょう。10年以上の間隔が確保できない場合は、一方を年金受取にする検討が必要です。

③退職所得は翌年度の社会保険料に影響しない

退職所得は翌年度の国民健康保険料・介護保険料の算定基礎から除外されています。一方、年金受取にすると雑所得として算定対象になるため、社会保険料が増加するリスクがあります。退職後に国民健康保険に切り替わる場合は特に注意が必要です。

④住民税は翌年1月1日の居住地で課税される

退職金の住民税は、退職した翌年1月1日時点の住所地の市区町村に納めます。海外移住を検討している場合は、居住地の変更タイミングにより住民税負担が変わる場合があります(節税目的の住所操作は認められないため、実態に即した判断が必要です)。

⑤退職所得の確定申告は基本不要だが例外あり

会社が「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで源泉徴収が完結し、確定申告は不要になります。ただし複数の退職金を同じ年に受け取った場合や、医療費控除などで確定申告を行う場合は退職所得を申告書に含める必要があります。

退職金の受取戦略|年代別シナリオ例

シナリオA:60歳定年・iDeCoなし

最もシンプルなケース。会社の退職金のみを一時金で受け取ればよいため、退職所得控除を計算して税金を確認するだけです。多くの場合、勤続30〜40年であれば税負担は数十万円以下か、ゼロになります。

シナリオB:60歳定年・iDeCo加入あり(10年ルール対応)

最も注意が必要なケース。定年退職と同時にiDeCoを一時金で受け取ると、控除が重複して計算されるため損になる可能性があります。
→ 推奨対策:①会社退職金を先に受け取り、iDeCoは65歳以降に受け取る(10年後を目指す)、または②iDeCoを年金形式で分割受取に変更。

シナリオC:65歳まで再雇用・退職金は65歳受取

再雇用で65歳まで働く場合、退職金受取を65歳まで繰り延べると勤続年数がさらに延び、退職所得控除が増額します。例えば40年勤続(60歳定年)→ 45年勤続(65歳退職)で控除額が2,200万円→2,550万円に増加します(70万円×追加5年分)。

退職金受取の注意点まとめ|チェックリスト

  • □ 退職所得控除額を自分の勤続年数で計算したか
  • □ 一時金・年金・併用のどの受取方法が有利かシミュレーションしたか
  • □ iDeCoや企業型DCの有無を確認し、10年ルールの影響を把握しているか
  • □ 会社退職金とiDeCo等の受取の順序・タイミングを計画しているか
  • □ 年金受取を選ぶ場合、社会保険料(国民健康保険・介護保険)への影響を試算したか
  • □ 退職所得の受給申告書を会社に提出しているか(源泉徴収の手続き完結のため)
  • □ 退職翌年度の住民税の支払い資金を確保しているか(退職所得の住民税は翌年まとめて徴収)

まとめ|退職金は「受け取り方」で手取りが数十万〜数百万円変わる

退職金の税金を最小化するために押さえておくべきポイントは以下の3点です。

  • 基本は一時金受取:退職所得控除と1/2課税の組み合わせで、長期勤続者ほど有利。勤続40年なら退職金2,000万円でも税金ゼロになる場合がある
  • 2026年からの10年ルールに要注意:iDeCoや企業型DCと会社退職金を両方一時金で受け取る場合、10年以上の間隔を確保するか、一方を年金形式にする対策が必要
  • 年金受取は社会保険料にも影響:税金だけでなく、国民健康保険・介護保険料の増加も考慮して総合的に判断する

退職後の生活資金計画は、退職金だけでなく公的年金・iDeCo・NISAを組み合わせた総合的な視点が重要です。現役のうちからiDeCoで老後資金を積み立てておくことが、受取時の選択肢を広げる鍵になります。

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