「年末調整を会社でやってもらったから、確定申告は必要ない」——実はこの思い込みで毎年損をしている会社員が多くいます。
年末調整と確定申告は別物で、年末調整を済ませた後でも確定申告が必要になるケース・確定申告すれば税金が戻ってくるケースが多数あります。医療費が多かった年、副業を始めた年、住宅を購入した年、株で損が出た年など、様々な状況で両方の手続きが必要になります。
この記事では、年末調整と確定申告の違い・両方が必要になる全ケース・注意点を2026年の最新情報をもとに整理します。「自分は確定申告が必要か?」が一目でわかるようにケース別に解説します。
年末調整と確定申告の違い|そもそも何が違うのか
まずは2つの手続きの根本的な違いを確認しましょう。
| 項目 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 目的 | 給与所得にかかる所得税の過不足を精算 | 1年間のすべての所得・控除を申告して税額を確定 |
| 手続きする人 | 勤務先(会社が従業員の代わりに処理) | 本人(自分で申告書を作成・提出) |
| 対象となる所得 | 給与所得のみ | すべての所得(給与・副業・配当・不動産等) |
| 手続き時期 | 毎年10〜12月(勤務先のスケジュールによる) | 翌年2月16日〜3月15日(還付申告は1月から) |
| 適用できる控除 | 限られた控除のみ(※下表参照) | すべての所得控除・税額控除 |
| 手続き先 | 勤務先(総務・経理部門) | 税務署(e-Tax・郵送・持参) |
最大の違いは「対象となる所得の範囲」です。年末調整は給与所得のみを処理する仕組みのため、副業・投資・不動産等の所得は対象外です。また、適用できる控除にも制限があります。
年末調整で「できる控除」と「できない控除」
年末調整では処理できない控除があります。これらを受けたい場合は確定申告が必要です。
| 控除の種類 | 年末調整 | 確定申告 |
|---|---|---|
| 給与所得控除 | ○ 自動適用 | ○ |
| 基礎控除 | ○ | ○ |
| 配偶者控除・配偶者特別控除 | ○ | ○ |
| 扶養控除 | ○ | ○ |
| 生命保険料控除 | ○ | ○ |
| 地震保険料控除 | ○ | ○ |
| 社会保険料控除 | ○ | ○ |
| 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo等) | ○ | ○ |
| 住宅ローン控除(2年目以降) | ○ | ○ |
| 医療費控除 | ✕ 不可 | ○ 要確定申告 |
| 寄附金控除(ふるさと納税等) | ✕ 不可 | ○ 要確定申告 |
| 住宅ローン控除(初年度) | ✕ 不可 | ○ 要確定申告 |
| 雑損控除 | ✕ 不可 | ○ 要確定申告 |
| 株式の損益通算・繰越控除 | ✕ 不可 | ○ 要確定申告 |
| 外国税額控除(米国株等) | ✕ 不可 | ○ 要確定申告 |
iDeCoの掛金控除は年末調整で処理できますが、医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン初年度は必ず確定申告が必要です。
年末調整の後に確定申告が必要になる7つのケース
ケース①:副業・フリーランス収入の所得が年間20万円超
給与以外の所得(副業・フリーランス・ネット販売等)が年間20万円を超える場合、確定申告が義務になります。「20万円」は売上ではなく所得(売上−経費)の金額です。
| 副業の種類 | 所得の計算 | 注意点 |
|---|---|---|
| ブログ・YouTube・アフィリエイト | 広告収入 − サーバー代・機材費等 | 経費計上が重要。消耗品・通信費も対象 |
| Webライター・フリーランス | 報酬 − 経費 | クラウドソーシング手数料も経費 |
| フリマアプリ・ネット販売 | 売上 − 仕入れ・送料等 | 自分の不用品販売は通常課税なし |
| 投資(株・FX) | 譲渡益・雑所得 | 特定口座源泉徴収ありは20万円に含まれない |
なお、副業収入が20万円以下の場合でも住民税の申告が必要なケースがあります。また、所得が20万円以下でも医療費控除等で確定申告する場合は、副業収入もまとめて申告が必要です。副業と年収の壁については副業と年収の壁【2026年最新】も参考にしてください。
ケース②:医療費控除を受けたい
その年に支払った医療費が一定額を超える場合、確定申告で医療費控除を申告できます。医療費控除は年末調整では処理できないため、年末調整が完了していても確定申告が必要です。
- 控除の対象額:(実際の医療費 − 保険金等で補填された額)− 10万円(または合計所得金額の5%、いずれか少ない方)
- 家族の医療費も合算可:生計を一にする配偶者・親族の医療費も含められる
- 対象となる費用:病院・歯科・薬局・介護保険サービス等(交通費も一部対象)
- セルフメディケーション税制:OTC医薬品の購入費が年間1.2万円超の場合、最大8.8万円の控除が受けられる別制度もある
ケース③:住宅ローン控除の初年度
住宅を購入・新築し、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を初めて受ける年は、必ず確定申告が必要です。2年目以降は年末調整で対応できますが、初年度は申告書・登記事項証明書・売買契約書等の書類を揃えて確定申告で手続きします。
住宅ローン控除は所得税から控除されますが、控除しきれない部分は翌年の住民税から一部控除される仕組みです。初年度の申告漏れは大きな損失につながるため、必ず期限内(3月15日)に申告しましょう。
ケース④:ふるさと納税をワンストップ特例なしで申請したい(または6自治体以上)
ふるさと納税は、ワンストップ特例制度を使えば確定申告不要ですが、以下の場合は確定申告が必要です。
- 寄付先が6自治体以上の場合(ワンストップ特例は5自治体以内の制限)
- ワンストップ特例の申請期限(翌年1月10日必着)を過ぎた場合
- 医療費控除や株式申告等で確定申告をする場合(確定申告するとワンストップ特例は自動無効になるため、ふるさと納税も確定申告に含める必要がある)
特に注意が必要なのは「医療費控除のために確定申告した年は、ワンストップ申請済みでもふるさと納税を確定申告でも申告し直す必要がある」という点です。確定申告で寄附金控除の申告をしないと、ふるさと納税の控除が受けられなくなります。ふるさと納税の申請方法の詳細はふるさと納税はワンストップと確定申告どちらがいい?をご覧ください。
ケース⑤:株式投資で損失があり損益通算・繰越控除をしたい
株式の売却損と売却益・配当金を相殺する「損益通算」、損失を翌年以降3年間繰り越す「繰越控除」は、いずれも確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)の同一口座内は自動通算されますが、複数の証券会社をまたぐ場合・配当金との通算には確定申告が必要です。
株式投資の損益通算の詳しいやり方は株式投資の確定申告・損益通算のやり方で解説しています。また、高配当株と配当金の税金については高配当株の税金・確定申告の記事も参考にしてください。
ケース⑥:2か所以上から給与を受け取っている
本業の会社以外にも別の会社・パートタイム等から給与をもらっている場合、副業(別の会社)からの給与が年間20万円超なら確定申告が必要です。メイン以外の勤務先では年末調整がされないケースが多く、所得税の未納状態になることがあるため注意が必要です。
ケース⑦:年収2,000万円超
年間の給与収入が2,000万円を超える場合、年末調整ができないため全員が確定申告の義務があります(所得税法上の規定)。この場合は年末調整なしで確定申告のみで税務処理を行います。
ケース⑧:年の途中で退職し再就職していない
年の途中で退職し、12月31日時点でどこにも勤務していない場合は年末調整を受ける機会がないため、確定申告が必要です。ただし退職後に再就職した場合は、転職先で年末調整が行われます。
なお、退職後に失業給付(雇用保険)を受給している場合、失業給付は所得税の課税対象外のため申告不要です。
2026年の確定申告で注意すべき改正点
令和7年度税制改正(2025年成立)の内容が、2026年2〜3月に行う2025年分の確定申告に影響します。主な変更点を確認しておきましょう。
① 基礎控除の引き上げ
2025年分(2026年申告)から、基礎控除が48万円から58万円に引き上げられました。これにより課税所得が10万円分下がり、その分の所得税・住民税が軽減されます。給与所得控除の最低額も55万円から65万円に引き上げられており、合計で年収の非課税枠が拡大しています。
② 特定親族特別控除の新設
19歳以上23歳未満の子どもを持つ親に新たに「特定親族特別控除」が設けられました。大学生世代の子どもがアルバイト等で給与収入150万円を超えた場合でも、188万円(所得123万円)までは親が段階的に控除を受けられます。給与収入150万円以下であれば最大63万円の控除がフルで適用されます。対象の子どもがいる方は申告時に確認しましょう。
③ 確定申告期間
2025年分(令和7年分)の確定申告期間は2026年2月16日(月)〜3月16日(月)です。e-Taxは1月5日から申告受付を開始しています。還付申告(税金が戻ってくる場合)は2026年1月1日から申告可能で、翌年1月以降5年間申告できます。
年末調整と確定申告を両方やるときの注意点
① 二重申告にならないよう注意
年末調整で処理した控除(配偶者控除・生命保険料控除・iDeCo等)は、確定申告書でも自動的に反映されます。確定申告の際は、年末調整で処理済みの控除を重複して入力しないようにしましょう。e-Taxでマイナポータル連携を行うと、年末調整の情報が自動取込されるため入力ミスを防げます。
② 確定申告でふるさと納税のワンストップ特例が無効になる
医療費控除・株式損益通算等のために確定申告を行う場合、すでにワンストップ特例を申請していても自動的に無効になります。確定申告書にふるさと納税の寄附金控除を必ず含めて申告し直す必要があります。
「医療費控除の申告しかしなかったのにふるさと納税の控除が消えた」という失敗が毎年多発しています。確定申告をする年は、すべての控除をまとめて申告することを忘れないようにしましょう。
③ 源泉徴収票を必ず用意する
確定申告には、勤務先から発行される源泉徴収票が必要です(e-Taxでマイナポータル連携する場合は不要な場合もあり)。通常は年末調整後の12〜1月に会社から配布されます。複数の勤務先がある場合はすべての会社の源泉徴収票が必要です。
④ 住民税の申告も別途必要なケースがある
確定申告をした場合、住民税は確定申告のデータが市区町村に連携されるため、別途住民税の申告は不要です。しかし、副業所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告(市区町村への申告)が必要になる場合があります。副業がある方は市区町村の住民税申告の要否を確認しておきましょう。
自分が確定申告すべきか判断するフロー
- 副業・フリーランス等の所得が年間20万円超? → YES:確定申告が義務
- 年収2,000万円超? → YES:確定申告が義務
- 2か所以上から給与をもらっていて、合計が20万円超? → YES:確定申告が義務
- 年の途中で退職し12月31日時点で無職? → YES:確定申告が必要
- 医療費が年間10万円超(または所得の5%超)かかった? → YES:確定申告で医療費控除を申告(任意だが節税になる)
- 住宅ローン控除の初年度? → YES:確定申告が必要
- ふるさと納税をワンストップ以外で申告したい・6自治体以上? → YES:確定申告が必要
- 株式の損失があり損益通算・繰越控除をしたい? → YES:確定申告が必要
- すべてNO → 年末調整のみで完結(確定申告不要)
よくある疑問Q&A
Q. 確定申告すると会社にバレる?
A. 確定申告自体が会社にバレることはありません。ただし、副業収入を確定申告すると翌年の住民税額が増加し、会社の経理担当者に気づかれる可能性があります。住民税を「普通徴収(自分で納付)」に設定することで、副業分の住民税を会社経由ではなく個人で直接納付できるため、バレるリスクを低減できます。確定申告書の「住民税の徴収方法の選択」欄で「自分で納付」を選択してください。
Q. 確定申告をしなかった場合はどうなる?
A. 確定申告が義務であるにもかかわらず申告しなかった場合、無申告加算税(15〜20%)と延滞税が課されます。税務署から「お尋ね」の通知が届く場合もあります。一方、還付申告(税金が戻ってくるケース)は義務ではないため未申告でも罰則はありませんが、5年間の時効があるため早めに申告することをお勧めします。
Q. e-TaxはスマホだけでOK?マイナンバーカードは必要?
A. e-Taxはスマホ(iPhoneまたはAndroid)で申告可能です。マイナンバーカードがあればスマホのNFC機能で読み取って認証でき、最も手続きがスムーズです。マイナンバーカードがない場合は、ID・パスワード方式(税務署で発行)でも利用できます。マイナポータル連携を使えば源泉徴収票・医療費データ等が自動取込されてさらに便利です。
Q. 年末調整で申告漏れがあった場合はどうすればいい?
A. 年末調整で控除の申告を漏らした場合、翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に確定申告することで追加の控除を受けられます。5年以内であれば過去の申告漏れ分も還付申告で取り戻せます。「あのとき申告しておけばよかった」という後悔は、遡及申告で解消できることを覚えておきましょう。
確定申告をスムーズに進めるための準備チェックリスト
| 書類・情報 | 入手先 | 必要なケース |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 勤務先から12〜1月に配布 | すべての確定申告 |
| 医療費の領収書(または医療費通知書) | 病院・薬局・健康保険組合 | 医療費控除 |
| 住宅ローン残高証明書・登記事項証明書 | 金融機関・法務局 | 住宅ローン控除初年度 |
| 寄附金受領証明書 | 寄付先自治体 | ふるさと納税(確定申告する場合) |
| 年間取引報告書 | 証券会社(1〜2月発行) | 株式の損益通算・配当控除 |
| 副業の収支内訳書(帳簿) | 自分で作成 | 副業所得の申告 |
| マイナンバーカード | 自分で保管 | e-Tax利用時 |
まとめ:年末調整後でも確定申告が必要なケースは意外と多い
- 年末調整は給与所得のみ対象。医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン初年度・株式損益は対象外
- 副業所得20万円超・年収2,000万円超・複数勤務先の場合は確定申告が義務
- 医療費控除・ふるさと納税・住宅ローン初年度・株式損益通算は確定申告をすると節税になる
- 確定申告する年はワンストップ特例が自動無効になるため、ふるさと納税も一緒に申告が必要
- 2025年分からは基礎控除・給与所得控除が引き上げられているため、控除額が増えている
- e-Taxとマイナポータル連携を活用すれば書類の大部分が自動取込で申告の手間を大幅に削減できる
年末調整が済んだからといって安心せず、上記のケースに当てはまるか毎年確認する習慣をつけましょう。確定申告で税金が戻ってくる場合は還付申告(1月から可能)で早めに申告するのが得策です。
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