「自分は老後に厚生年金をいくらもらえるんだろう?」「年収によってどれくらい差が出るの?」――老後の生活設計を考えるうえで、厚生年金の受給額を把握することは欠かせません。
結論からいうと、厚生年金の受給額は「平均年収」と「加入期間」の掛け算で決まります。年収300万円と600万円では老後の年金額に年間60万円以上の差がつきます。また、2026年度は在職老齢年金の基準額引き上げなど重要な制度改正が実施されています。
この記事では、2026年度最新情報をもとに、年収別・加入期間別の厚生年金受給額早見表、計算方法、制度改正のポイント、そして老後の資産不足への対策まで、わかりやすく解説します。
厚生年金の仕組みをおさらい|国民年金との2階建て構造
日本の公的年金は「2階建て」の構造になっています。
| 種類 | 対象者 | 保険料 | 2026年度の受給額(月額) |
|---|---|---|---|
| 老齢基礎年金(1階) | 20〜60歳の全国民 | 月16,980円(定額) | 満額:約70,608円/月(40年加入) |
| 老齢厚生年金(2階) | 会社員・公務員 | 標準報酬月額×18.3%(労使折半) | 平均報酬・加入期間による |
会社員・公務員は2つを合計した金額を65歳から受け取れます。自営業者は基礎年金のみ(月額最大70,608円)なのに対し、会社員は厚生年金が上乗せされるため、老後の年金額は大きく有利です。
厚生年金の保険料は会社が半額を負担してくれます(労使折半)。保険料率は18.3%(本人負担9.15%)で、自営業者の国民年金保険料(月16,980円の定額)と比べても、高収入の方ほど2階部分の年金が厚く積み上がる仕組みです。
2026年度の老齢基礎年金 満額:月70,608円(年847,300円)
厚生年金の受給額計算式
老齢厚生年金の受給額(報酬比例部分)は以下の式で計算されます。
| 計算式 | 説明 |
|---|---|
| 平均標準報酬月額 × 0.005481 × 加入月数 | 2003年4月以降の加入期間(総報酬制) |
平均標準報酬月額とは、在職中の平均月収(賞与を含む場合は12で割った値)に近い値です。ざっくりとした計算では「平均年収÷12」で代用できます。
計算例(年収500万円・40年加入の場合):
- 平均標準報酬月額:500万円÷12=約416,667円
- 老齢厚生年金:416,667円×0.005481×480ヶ月(40年)=約1,096,320円/年(月約91,360円)
- 老齢基礎年金満額:約847,300円/年(月約70,608円)
- 合計:約1,943,620円/年(月約161,968円)
実際の受給額は、毎月の標準報酬月額・標準賞与額の記録が基になるため、概算値です。正確な額は「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。
【年収別早見表】厚生年金はいくらもらえる?(40年加入・令和8年度)
以下は、現役時代の平均年収別に、65歳から受け取れる年金受給額の目安です(老齢基礎年金満額847,300円を含む)。加入期間は40年(480ヶ月)を前提としています。
| 平均年収(生涯平均) | 老齢厚生年金(年額) | 老齢基礎年金(年額) | 合計年金額(年額) | 月額換算 |
|---|---|---|---|---|
| 200万円 | 約44万円 | 約85万円 | 約129万円 | 約10.7万円 |
| 300万円 | 約66万円 | 約85万円 | 約151万円 | 約12.6万円 |
| 400万円 | 約88万円 | 約85万円 | 約172万円 | 約14.4万円 |
| 500万円 | 約110万円 | 約85万円 | 約195万円 | 約16.2万円 |
| 600万円 | 約132万円 | 約85万円 | 約217万円 | 約18.1万円 |
| 700万円 | 約153万円 | 約85万円 | 約238万円 | 約19.8万円 |
| 800万円 | 約175万円 | 約85万円 | 約260万円 | 約21.7万円 |
| 1,000万円 | 約219万円 | 約85万円 | 約304万円 | 約25.4万円 |
※ 標準報酬月額には上限(月650,000円)があるため、年収1,000万円超は実際の受給額の伸びが鈍化します。また、2003年以前の加入期間は別の計算式が適用されます。あくまで目安として参考にしてください。
加入期間別の受給額比較(年収500万円の場合)
厚生年金は加入期間が長いほど受給額が増えます。転職・退職・育休で加入期間が短くなるケースも多いため、加入年数別の影響を確認しておきましょう。
| 加入期間 | 加入月数 | 老齢厚生年金(年額) | 基礎年金との合計(年額) | 月額換算 |
|---|---|---|---|---|
| 20年 | 240ヶ月 | 約548,000円 | 約1,395,000円 | 約116,000円 |
| 30年 | 360ヶ月 | 約822,000円 | 約1,669,000円 | 約139,000円 |
| 35年 | 420ヶ月 | 約959,000円 | 約1,806,000円 | 約151,000円 |
| 40年 | 480ヶ月 | 約1,096,000円 | 約1,943,000円 | 約162,000円 |
20年加入と40年加入では、年間約548,000円・月約46,000円の差が生じます。加入期間を確認するには「ねんきん定期便」(誕生月に郵送)や「ねんきんネット」(オンライン)を活用してください。
2026年度の制度変更ポイント
①在職老齢年金の基準額引き上げ(2026年4月〜)
働きながら老齢厚生年金を受け取っている方(65歳以上を含む)が対象の「在職老齢年金制度」が2026年4月に改正されました。
| 改正前 | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|
| 月収+年金額が月51万円超で年金が減額 | 月収+年金額が月65万円超で年金が減額 |
基準額が月51万円から65万円へ引き上げられたため、これまで年金が一部または全額カットされていた方でも、受給額が回復・増加するケースが増えます。「働き損」の解消が目的の改正です。たとえば月収40万円で年金月15万円(合計55万円)だった方は、改正前は月4万円がカットされていましたが、改正後は65万円を超えないためカットなしで受給できます。
②厚生年金の加入要件拡大(2026年10月〜)
これまで「年収106万円の壁」と呼ばれていたパートタイマー等の厚生年金加入要件(週20時間以上かつ年収106万円以上)が2026年10月に撤廃されます。これにより、週20時間以上働く方は収入に関わらず厚生年金に加入対象となります。
加入範囲が広がることで、パートタイマーや短時間労働者も厚生年金の受給資格を得やすくなります。一方で保険料の天引きが始まるため、手取りが一時的に減る可能性がある点に注意してください。
③2026年度の年金額改定
老齢基礎年金の2026年度満額は月70,608円(年847,300円)です。マクロ経済スライドにより、物価上昇に対して年金額の伸びが抑制される仕組みが継続されているため、将来的な実質購買力の低下に備えた自助努力が重要です。
繰上げ・繰下げ受給の損得シミュレーション
年金の受取開始時期は60〜75歳の間で自由に選べます。通常の受取開始は65歳ですが、早める(繰上げ)か遅らせる(繰下げ)かで受給額が変わります。
| 受取開始年齢 | 増減率 | 月16万円の場合の月額 | 損益分岐点 |
|---|---|---|---|
| 60歳(最早) | ▲24.0%減 | 約12.2万円 | 80歳2ヶ月(約20年で元が取れる) |
| 62歳 | ▲14.4%減 | 約13.7万円 | 約80歳6ヶ月 |
| 65歳(標準) | 0% | 16万円 | — |
| 70歳 | +42.0%増 | 約22.7万円 | 81歳11ヶ月(約17年で元が取れる) |
| 75歳(最遅) | +84.0%増 | 約29.4万円 | 86歳(約11年で元が取れる) |
繰下げ受給の損益分岐点は、70歳受取開始なら81歳11ヶ月です。平均寿命(男性81歳・女性87歳)を踏まえると、女性は繰下げが有利になりやすい傾向があります。健康状態・家計状況・配偶者の年金なども考慮して判断しましょう。
なお、繰上げ受給の注意点として、一度繰り上げると減額率は生涯変わりません。また、繰上げ中は障害基礎年金の受給資格を失うリスクがあります。健康に不安がある場合や早めの現金が必要な場合を除き、繰上げには慎重な判断が必要です。在職老齢年金との兼ね合いも含め、年金事務所や社会保険労務士に相談することも選択肢のひとつです。
厚生年金だけでは老後が不安?不足額の試算
65歳以降の生活費の目安は、総務省の家計調査によると夫婦2人で月約27〜28万円です。年収400万円台の会社員(月14〜16万円受給想定)では、毎月10万円以上の不足が生じる計算になります。
| 年収帯 | 65歳からの年金(月額目安) | 生活費月28万円との不足額 | 20年間の不足総額 |
|---|---|---|---|
| 300万円台 | 約12.6万円 | 約15.4万円 | 約3,696万円 |
| 400万円台 | 約14.4万円 | 約13.6万円 | 約3,264万円 |
| 500万円台 | 約16.2万円 | 約11.8万円 | 約2,832万円 |
| 600万円台 | 約18.1万円 | 約9.9万円 | 約2,376万円 |
| 700万円台 | 約19.8万円 | 約8.2万円 | 約1,968万円 |
※ 生活費は個人差があります。夫婦どちらかが厚生年金加入者の場合は配偶者の基礎年金(最大月70,608円)も加算されます。上記はあくまで大まかな目安です。
「老後2,000万円問題」が話題になりましたが、年収帯によっては不足額が3,000万円以上になることも珍しくありません。公的年金だけに頼らず、現役時代から自助努力で資産を積み上げることが重要です。
ただし、配偶者が専業主婦(夫)の場合は、妻(夫)が老齢基礎年金(月最大70,608円)を受給するため、夫婦合計の年金額は単純な計算より多くなります。また、厚生年金加入者の配偶者は「第3号被保険者」として保険料負担なしで基礎年金が受け取れる点も考慮に入れましょう。実際の老後の月収見込みは、ねんきんネットで試算した家族全員の年金合計額をもとに計算するのが最も正確です。
老後不足を補う資産形成の対策
老後の年金不足を補うための現実的な方法として、まず新NISA・iDeCoを活用した長期積立投資が挙げられます。
新NISAで老後資金を積み立てる
新NISAは運用益・配当が非課税で、いつでも売却・引き出しができます。毎月の積立額に応じて、20〜30年後の資産が大きく変わります。
➡ 新NISA 毎月5万円積立で20年後はいくらになる?利回り別シミュレーションと非課税メリット完全解説
積立額と年間非課税枠の使い方についても計画的に考えましょう。
➡ 新NISA 年間360万円満額 vs 少額積立 どちらを選ぶべき?【2026年版・年収別シミュレーション】
複利の力で老後資産を最大化する
投資信託の複利効果を活かせば、早く始めるほど老後資産が大きく育ちます。月3万円を年利5%で30年積み立てると元本1,080万円が約2,496万円に成長します。
➡ 投資信託の複利効果をわかりやすく計算して解説|月3万円で30年後はいくらになる?
老後の取り崩し戦略も事前に考える
新NISAで蓄えた資産をどう取り崩すかも重要です。年金受取と組み合わせた計画的な取り崩し戦略を立てることで、老後の税負担を最小化できます。
➡ 新NISAの出口戦略|非課税期間終了後はどうなる?取り崩し3つの方法を完全解説
高配当株・ETFで配当収入を老後の生活費に
高配当ETFをNISA成長投資枠で保有すると、配当金が非課税で受け取れます。年金の不足分を配当収入で補う「配当年金」の考え方が、老後の安心につながります。
➡ 新NISA 成長投資枠おすすめETF・銘柄ランキング2026【日本株・米国株別】
➡ 米国高配当ETF VYM・HDV・SPYD 徹底比較2026年版|どれを買う?利回り・経費率・NISA対応を一覧解説
まずはNISA口座を開設することが第一歩です。証券会社選びは口座管理料・取扱商品・クレカ積立のポイント還元率などを比較して決めましょう。口座開設はオンラインで完結でき、最短翌営業日から取引が開始できます。
➡ 新NISA おすすめ証券口座比較2026|楽天・SBI・マネックス・DMM株を徹底比較
よくある質問(FAQ)
Q. 厚生年金の受給額を正確に知る方法は?
A. 日本年金機構の「ねんきんネット」(オンライン)または毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で、これまでの加入記録と老齢年金の見込み額を確認できます。特に50歳以上の方の定期便には受給見込み額が記載されています。
Q. 転職・転職を繰り返した場合、年金はどうなる?
A. 厚生年金は複数の会社での加入期間が通算されます。転職しても加入記録はすべて合算され、年金額の計算に反映されます。ただし、会社と会社の間に国民年金(第1号)期間があった場合は、その分は基礎年金のみとなります。「ねんきん定期便」で過去の加入記録に漏れや誤りがないかを確認しておくことも重要です。年金記録に疑問がある場合は年金事務所に問い合わせることができます。
Q. 厚生年金の保険料は年収の何%?
A. 2026年現在、保険料率は18.3%(労使折半で本人負担9.15%)です。年収500万円の場合、年間保険料は約91万5,000円で、そのうち約45万7,500円を本人が負担します(残りは会社負担)。保険料は標準報酬月額(毎年9月〜翌年8月)に基づいて算定されます。毎年4〜6月の給与が翌年の保険料に影響するため、この時期に残業が多い方は翌年の手取りが下がる点に注意してください。
Q. 夫婦共働きの場合、年金はどうなる?
A. 夫婦それぞれが厚生年金を受け取ることができます。たとえば夫が年収500万円・妻が年収300万円で各40年加入した場合、合計年金は約195万円+約151万円=年約346万円(月約28.8万円)となり、生活費をほぼ賄える水準になります。共働きは老後の年金という観点でも大きなメリットがあります。
まとめ|厚生年金の年収別受給額早見表と老後対策
| 平均年収 | 厚生年金(月額目安) | 月28万円の生活費との差 | 主な対策 |
|---|---|---|---|
| 300万円台 | 約12.6万円 | 約▲15万円 | 新NISA・iDeCoの早期積立が必須 |
| 400万円台 | 約14.4万円 | 約▲14万円 | 新NISAで月3〜5万円積立を継続 |
| 500万円台 | 約16.2万円 | 約▲12万円 | 新NISA満額+高配当ETFで配当補完 |
| 600万円台 | 約18.1万円 | 約▲10万円 | NISA成長投資枠で高配当株も活用 |
| 700万円台以上 | 約19.8万円〜 | 約▲8万円〜 | 余裕資金で複数の投資手段を組み合わせ |
厚生年金は、長く働いて収入が高いほど受給額も増えます。しかし、どの年収帯でも老後の生活費をすべて賄える水準ではなく、月10万円前後の不足が生じるケースがほとんどです。
「老後いくら受け取れるか」を今のうちから把握しておくことは、現役時代の資産形成計画の精度を高める第一歩です。
「老後いくら受け取れるか」を把握した上で、現役時代から新NISA・iDeCo・高配当ETFなどを活用して自助努力の老後資産を積み上げることが、豊かな老後への最大の近道です。まず「ねんきんネット」で自分の受給見込み額を確認し、不足額を計算してみましょう。


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