「株価が暴落しているのに、このまま積立を続けていいの?」──2026年、トランプ関税ショックや中東情勢の緊張を受けた相場下落を目の前にして、そう不安を感じている会社員は少なくありません。毎月の積立額が目減りしていくのを見ると、「一旦止めた方がいいかも」と思うのは自然な感情です。
しかし結論から言います。過去30年以上のデータが示すとおり、暴落時に積立を止めることは「最も高いところで売る行動」に相当します。リーマンショック・コロナショック・トランプ関税ショックのいずれの局面でも、積立を続けた投資家は止めた投資家の2倍以上の資産を手にしています。
本記事では、歴史的なデータと新NISA固有のルールを踏まえながら、「暴落時に積立を続けるべき理由」と「絶対にやってはいけないNG行動」を解説します。
【結論】暴落時こそ積立を続けるべき3つの理由
① 暴落時は「安値で多く買える」チャンスである
毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」では、価格が下がるほど多くの口数を購入できます。例えば月3万円でeMAXIS Slim オルカンを積み立てている場合、基準価格が1万円のときは3口、暴落で7,000円まで下がれば約4.3口購入できます。
この「安いときに多く買える」ことが、積立投資の最大の武器です。暴落は「損をしている」のではなく、「将来の利益の種を安く仕込んでいる」時間だと理解することが、長期投資を成功させる最初の一歩です。
② 相場は必ず回復してきた──歴史が証明
過去の主な暴落と、株価が元の水準に戻るまでの期間を確認してください。
| 暴落イベント | 最大下落率(S&P500) | 回復までの期間 |
|---|---|---|
| ITバブル崩壊(2000〜02年) | 約▲49% | 約5年4か月 |
| リーマンショック(2008〜09年) | 約▲57% | NYダウ 約2年4か月 |
| コロナショック(2020年) | 約▲34% | 約5〜11か月 |
| トランプ関税ショック(2025年4月) | 約▲19% | 数ヶ月以内に大半回復 |
最も深刻だったリーマンショックですら、NYダウは2年4か月で回復しています。コロナショックは11か月以内に回復。どの暴落も「一時的」であり、長期的には新高値を更新し続けてきたというのが、100年以上の市場の歴史です。
③ 積立を止めると「安値で買うチャンス」を永遠に逃す
暴落時に積立を停止してしまうと、最も安い価格帯で購入できる期間を丸々逃します。そして「回復したから再開しよう」と思ったときには、すでに価格は上昇しています。結果として、高いときに買えなかった口数を、高値で追加購入するという最悪のパターンに陥ります。
データで検証:リーマンショック後の「継続 vs 停止」の差
野村證券が検証した実データがあります。リーマンショック直後(2008年10月)から毎月3万円を積み立てた場合と、積立を停止した場合の5年後(2013年9月末)の資産額を比較すると、以下の結果が出ています。
| 行動パターン | 5年後の資産額 | 投資元本 | 差 |
|---|---|---|---|
| 暴落後も積立継続 | 約922万円 | 180万円 | +742万円 |
| 暴落時に積立停止 | 約415万円 | — | — |
| 継続 vs 停止の差 | 約507万円(2倍以上) | ||
積立を続けた投資家は、停止した投資家の2倍以上の資産を5年間で築いています。この差の根拠は明確です。暴落中の安値で毎月買い続けた口数が、回復局面で一気に価値を増したのです。
さらに長期で見ると、2011年9月から積立を開始した実例では、元本209万円が2026年1月時点で1,083万円(約5.2倍)に成長しています。この期間にはコロナショック・ウクライナショック・トランプ関税ショックが含まれていましたが、すべての暴落を乗り越えた結果です。
2026年の相場環境と新NISAへの影響
2026年現在、相場は複数のリスク要因を抱えた不安定な環境が続いています。
- トランプ関税の余波:2025年4月のトランプ関税ショック後も、関税政策の不透明感が続いている
- 中東地政学リスク:米国・イスラエル・イランの緊張による原油価格上昇・インフレ再燃懸念
- AI株の調整局面:2025年末〜2026年にかけて米国AI関連株の一部に調整圧力
- 日銀の利上げ影響:円高進行による輸出企業の収益圧迫・日本株への下落圧力
SBI証券は「2026年はトランプ2.0の時代で株価ショックが常態化する可能性が高い」と指摘しています。しかしこれは「投資をやめるべき理由」ではなく、「定期積立の自動化こそが最も合理的な対応」であることを意味します。毎月自動で積み立てていれば、相場を気にせず安値で口数を仕込み続けることができます。
実際、2025年4月のトランプ関税ショック時には、海外の機関投資家が「底値で大幅買い越し」を行った一方、国内の一般投資家の一部は投資信託を売り越しました。この行動差が、その後の回復局面でのリターンの差につながっています。
新NISAで暴落時に売却してはいけない3つの理由
新NISAには、特定口座にはない固有のルールがあります。暴落時の売却が「特に危険」な理由を理解してください。
① NISA口座の損失は損益通算できない
特定口座では、A銘柄で50万円の利益が出てもB銘柄で30万円の損失があれば、課税対象は差し引き20万円です(損益通算)。しかしNISA口座の損失は、特定口座の利益と通算できません。NISA口座で30万円の損失を出して売却しても、税金の計算上、その損失は「なかったこと」になります。
② 損失の繰越控除も使えない
特定口座では損失を3年間繰り越して将来の利益と相殺できますが、NISA口座にはこの制度がありません。暴落時に売却して損失を確定させても、将来の節税には一切活用できないのです。
③ 非課税枠の回復は「簿価ベース・翌年以降」
例えば100万円で購入した投資信託が暴落で70万円に下がったとき、70万円で売却すると翌年に復活する枠は「購入時の100万円分」です(簿価ベース)。枠の損失は生じませんが、30万円の実損失が確定し、かつその損失は税制上まったく活用できないという最悪の結果になります。
まとめると、新NISAで暴落時に売却すると「損失確定・損益通算不可・繰越控除不可」という三重苦を背負うことになります。新NISAの売却は、利益が出たときのためにあります。損失が出ているときに売却する理由はほぼありません。
暴落時にやってしまいがちなNG行動5選
NG①:積立を一時停止する
「下落が落ち着いてから再開しよう」と思って停止すると、最安値圏での購入機会を丸ごと逃します。「下落が落ち着く」ということは「価格が回復している」ことを意味するため、再開時には割高な価格で購入することになります。
NG②:含み損を抱えたまま売却する
評価損が気になって「損が増える前に売ろう」と売却するのは、投資の世界でよく言われる「狼狽売り」です。前述のとおり、新NISA口座での売却損は税制上のメリットがまったくありません。長期保有が前提の商品(インデックスファンド等)は、短期の下落で売却する理由がありません。
NG③:暴落時に積立額を大幅に増やす
「安いから今のうちに多く買おう」と生活防衛資金まで投資に回すのは危険です。底値だと思って投資した直後にさらに下落するケースは珍しくなく、生活費が不足して最安値圏で売却を余儀なくされる最悪のパターンになります。増額するとしても、余裕資金の範囲内に限定してください。
NG④:毎日アプリで資産残高を確認する
暴落時に毎日残高を確認すると、損失の数字を目の前にして感情的な判断をしやすくなります。長期積立投資家にとって、日々の相場変動を追うことにメリットはありません。確認頻度は月1回、もしくは四半期に1回程度で十分です。
NG⑤:暴落を予測して投資先を変える
「これからさらに下がるから、一旦安全な現金に戻そう」という判断は、相場の底と天井を予測することを意味します。プロのファンドマネージャーでも相場の底を正確に当てることはほぼ不可能です。一般投資家が銘柄入れ替えや投資先変更でタイミングを図ろうとすると、ほぼ必ず「売り時を間違える」結果になります。
暴落を心理的に乗り越えるための4つの対策
対策①:生活防衛資金を先に確保する
暴落時に売却を余儀なくされる最大の原因は「急な出費が発生して現金が必要になること」です。月支出の3〜6か月分の生活防衛資金を投資とは別の普通預金に確保しておけば、暴落時でも焦って売る必要がなくなります。生活防衛資金は「投資しない余裕資金」として必ず確保してください。
対策②:自動積立設定を解除しない
毎月の自動積立設定は「感情を排除するシステム」です。「暴落したから停止しよう」という判断は感情が介入したサインです。自動積立の最大の強みは「相場を見ずに機械的に安値で買い続けられること」にあります。設定を一度組んだら、よほどの事情がない限り変更しないことが鉄則です。
対策③:長期シミュレーションで「20年後の数字」を確認する
暴落時に不安を感じたら、積立シミュレーターで20年後の試算を確認してください。月5万円を年率5%で20年積み立てると、元本1,200万円が約2,056万円になります。途中の暴落で一時的に評価額が下がっても、20年後の最終資産額はシミュレーションの数字に近づいていきます。「今の数字」ではなく「20年後の数字」を判断の基準にしてください。
対策④:暴落を「バーゲンセール」と言葉で言い換える
行動経済学的に、人は「損失」を「利得」の約2倍強く感じるとされています(プロスペクト理論)。この感情のバイアスが「暴落時に売ってしまう」行動の原因です。暴落を「評価額が一時的に下がっている状態」ではなく、「同じ金額でより多くの口数を仕込めるバーゲンセール期間」と言葉で言い換える習慣を持つと、感情的な売却を防ぐ助けになります。
積立継続できるか確認:暴落時セルフチェックリスト
暴落時に「このまま続けるべきか」と迷ったら、以下のチェックリストで現状を確認してください。
| チェック項目 | OKの状態 | 要対応の状態 |
|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 月支出×3〜6か月分が別口座にある | 投資資金と混在している |
| 積立金額 | 手取りの20%以内に収まっている | 手取りの30%以上を投資に回している |
| 投資商品 | 全世界株式・S&P500等の分散型 | 個別株・特定セクター集中 |
| 投資目的 | 20年後以上の長期資産形成 | 数年以内に使う予定の資金を投資中 |
| メンタル | 評価損を見ても売りたい衝動がない | 毎日残高を確認して眠れない |
すべて「OKの状態」なら、そのまま積立継続が正解です。「要対応の状態」が1つでもある場合は、積立金額を減らすか、生活防衛資金を先に積み上げることを優先してください。「投資を止める」のではなく「投資の規模を生活に合わせる」のが適切な対処です。
よくある質問Q&A
Q1. 暴落がひどい場合、一時的に積立を停止して底値を待ってから再開するのはダメですか?
A. 理論上は「底値で再開する」のが最善ですが、相場の底を正確に当てることは不可能です。「まだ下がりそう」と待ち続け、気づいたら大幅に回復していたというケースが大半です。積立を停止した期間の安値での購入機会は取り返せません。停止せずに継続する方が、長期的な資産形成では圧倒的に有利です。
Q2. 暴落しているときに追加投資(スポット購入)した方がいいですか?
A. 生活防衛資金を確保した上での余裕資金があれば、追加投資は有効な選択肢です。ただし「底値で買おう」という意識でタイミングを図ろうとするのは危険です。「現在の価格が通常より安い」という事実だけに基づいて、余裕資金の範囲内で追加するのが賢明です。
Q3. 暴落が長期化して10年以上回復しないことはありますか?
A. 特定の個別株や特定の国の株式市場では、長期間低迷するケースがあります(例:日経平均は1989年の最高値を2024年に初めて更新)。しかし全世界株式インデックス(オルカン)やS&P500のような分散投資では、長期的に右肩上がりを続けてきた実績があります。特定の国・銘柄への集中投資は避け、広く分散することが長期投資の基本です。
Q4. 新NISAで暴落時に売却してしまった場合、どうすればいいですか?
A. 売却した分の非課税枠は翌年から(簿価ベースで)復活します。損失確定は悔やまれますが、「また積み立て直せる」のが新NISAの強みです。売却後は感情的な判断を避け、同じ商品への積立を再開することを優先してください。「売ってしまった」ことより「今日から再開する」ことに集中しましょう。
Q5. 暴落時に投資信託を乗り換えた方がいいですか?
A. 基本的には不要です。eMAXIS Slim S&P500やオルカンのような低コストインデックスファンドを保有している場合、暴落を理由に乗り換えるメリットはほぼありません。乗り換えは「売却→再購入」を意味するため、売却時の損失確定と手数料コストが発生するリスクがあります。長期保有の方針を変える理由がない限り、継続保有が原則です。
まとめ:暴落時の正解は「何もしない」こと
- 過去のすべての暴落(リーマン・コロナ・トランプ関税)はいずれも回復し、その後新高値を更新してきた
- リーマンショック後に積立を継続した投資家は、停止した投資家の5年後時点で2倍以上の資産を築いた
- 新NISAで暴落時に売却すると「損失確定・損益通算不可・繰越控除不可」という三重の不利益が生じる
- 暴落時の正しい対応は「自動積立を維持し、資産残高の確認頻度を下げ、20年後のシミュレーションを見る」こと
- 暴落を心理的に乗り越える最大の準備は「生活防衛資金の確保」。余裕資金でのみ投資すれば、売らずに済む
2026年の不安定な相場環境だからこそ、長期積立投資の強みが発揮されます。暴落時に「何もしない」という行動は、感情的な判断がもたらすミスを防ぐ、最も賢い戦略です。
【今すぐできる3つのアクション】
① 積立の自動設定を確認し「解除しない」と決める:今すぐ証券会社のアプリを開き、自動積立の設定を確認してください。暴落時でも「このまま維持する」と心に決めることが最初のステップです。
② 生活防衛資金(月支出×3〜6か月分)を普通預金に確保する:生活防衛資金があれば、暴落時に「現金が必要だから売る」という最悪の選択をしなくて済みます。投資額を一時的に減らしてでも、まず生活防衛資金を確保してください。
③ 積立シミュレーターで20年後の数字を確認し、スクリーンショットを保存する:暴落時に見返せる「20年後のゴール」を手元に持っておくと、感情的な行動を抑えるお守りになります。月5万円・年率5%・20年後=約2,056万円という数字を今日記録しておきましょう。
積立を継続した場合の長期シミュレーションは新NISA 毎月5万円積立・20年後にいくらになるかで詳しく確認できます。また、暴落時でも積立を止めずに済む最大の備えである生活防衛資金の作り方は投資を始める前にやること【生活防衛資金の正しい作り方】をご覧ください。


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