新NISAを始めようとすると、ほぼ必ず直面する選択があります。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)とeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、どちらを買えばいい?」——この疑問を抱える人は今も急増しています。2026年5月時点で、両ファンド合計の純資産残高は約24兆円。新NISA投資家の”二強”として圧倒的な支持を集めています。本記事では2ファンドの最新スペックを比較し、月3万円・月5万円の積立で10年後・20年後にどれだけ差が生まれるかを3つのシナリオで試算します。
結論から言う:費用の差は年間わずか数百円、本質は「どちらのリターンが高いか」
多くの人が「信託報酬が安い方がいい」と考えてeMAXIS Slim 全世界株式を選びますが、2ファンドの信託報酬の差は年0.03365%(オルカン0.05775% vs S&P500 0.09140%)。100万円の運用残高に対してたったの336円/年の差です。
費用の差は誤差の範囲内。10年後の運用成果を左右するのは、米国株のみに集中するか・全世界に分散するかという投資対象の違いが生み出すリターン差です。これが本記事で試算する本題です。
2ファンドの基本スペック比較(2026年5月時点)
| 項目 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) |
|---|---|---|
| ベンチマーク | MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み・円換算) | S&P500指数(配当込み・円換算) |
| 投資対象 | 世界50カ国以上・約2,900銘柄 | 米国のみ・500社 |
| 信託報酬(年率) | 0.05775% | 0.09140% |
| 純資産総額 | 約12兆2,000億円 | 約11兆9,700億円 |
| 設定日 | 2018年10月31日 | 2018年7月3日 |
| 運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント | |
| 1年リターン(直近) | +46.40% | +19.24% |
| 3年リターン(年率) | 非公開(設定来約7年) | +26.23%(年率) |
| 5年リターン(年率) | 非公開 | +24.56%(年率) |
純資産残高はほぼ同規模で、どちらも突出した人気を誇ります。2026年1月には両ファンドへの月次資金流入が合計で初めて1兆円を突破しました。
「全世界株式でも63%は米国株」という重要な事実
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は「全世界に分散」というイメージがありますが、実際の構成比率を確認すると意外な事実が見えてきます。
| 国・地域 | eMAXIS Slim 全世界株式 構成比率(2026年時点) |
|---|---|
| 米国 | 約63% |
| 日本 | 約4.7% |
| インド | 約1.9% |
| 英国・フランス・ドイツ等 欧州 | 合計約14% |
| その他新興国・先進国 | 残り約16% |
つまり、全世界株式を買っても資産の3分の2は米国株への投資です。「全世界株式を選べばリスクがゼロになる」わけではなく、米国株が大きく下落すれば全世界株式も大幅に下落します。
逆にいえば、「S&P500は米国集中でリスクが高い」という批判もやや大げさです。全世界株式との差は「残り37%をどう扱うか」という問題に絞られます。
過去リターン比較:S&P500が長期で優位、しかし直近1年は全世界が逆転
両ファンドは2018年設定のため、まだ10年の実績データはありません。代わりに各ファンドが連動するベンチマーク指数(S&P500指数 vs MSCI ACWI)の過去データと、ファンド設定来のパフォーマンスから読み取れることを確認します。
長期(過去10年の指数ベース)ではS&P500が優位
2016〜2025年の10年間を見ると、S&P500指数の年率リターンは約10〜13%/年(円建て)、MSCI ACWIは約8〜10%/年(円建て)でした。この差は主に米国のビッグテック(GAFAM+)が牽引した米国株の長期強さと、非米国株(欧州・日本・新興国)の相対的な低迷によるものです。
直近1年(2025〜2026年)は全世界株式が逆転
ところが直近1年のリターンは全世界株式+46.40% vs S&P500+19.24%と、全世界株式が大きく上回っています。これは非米国株(特にインド・欧州・日本)の台頭と、米国ハイテク株の相対的な調整が重なった結果です。
この事実は「S&P500が常に勝つわけではない」という重要な示唆です。過去10年はS&P500優位だったが、未来も同じとは限らない——これが本記事のシミュレーションで3シナリオを設けた理由です。
10年後・20年後の積立シミュレーション【月3万円・月5万円】
次のシミュレーションは3つのシナリオで試算します。いずれも新NISA積立の非課税メリットを活用し、運用益に課税されない前提です。
- シナリオA(過去傾向継続):S&P500 年率10%、全世界株式 年率7%(過去10年の差が続く場合)
- シナリオB(均衡):両ファンドとも年率7%(どちらも同等の場合)
- シナリオC(全世界優位):S&P500 年率6%、全世界株式 年率8%(非米国株が台頭する場合)
月3万円で10年間積立した場合(元本360万円)
| シナリオ | eMAXIS Slim S&P500 | eMAXIS Slim 全世界株式 | 差額 |
|---|---|---|---|
| A:S&P500優位(10% vs 7%) | 約614万円 | 約519万円 | S&P500が約95万円多い |
| B:均衡(7% vs 7%) | 約519万円 | 約519万円 | ほぼ同等(差は信託報酬のみ) |
| C:全世界優位(6% vs 8%) | 約492万円 | 約544万円 | 全世界が約52万円多い |
月5万円で10年間積立した場合(元本600万円)
| シナリオ | eMAXIS Slim S&P500 | eMAXIS Slim 全世界株式 | 差額 |
|---|---|---|---|
| A:S&P500優位(10% vs 7%) | 約1,024万円 | 約865万円 | S&P500が約159万円多い |
| B:均衡(7% vs 7%) | 約865万円 | 約865万円 | ほぼ同等 |
| C:全世界優位(6% vs 8%) | 約820万円 | 約907万円 | 全世界が約87万円多い |
月3万円で20年間積立した場合(元本720万円)
| シナリオ | eMAXIS Slim S&P500 | eMAXIS Slim 全世界株式 | 差額 |
|---|---|---|---|
| A:S&P500優位(10% vs 7%) | 約2,279万円 | 約1,562万円 | S&P500が約717万円多い |
| B:均衡(7% vs 7%) | 約1,562万円 | 約1,562万円 | ほぼ同等 |
| C:全世界優位(6% vs 8%) | 約1,395万円 | 約1,783万円 | 全世界が約388万円多い |
【シミュレーション前提】毎月一定額を積み立て、運用益は非課税(新NISA)。信託報酬・為替変動は考慮せず。過去の実績は将来のリターンを保証しません。
20年のシミュレーションを見ると、シナリオAとCで実に700〜400万円近い差が生まれます。どちらのシナリオが現実になるかは誰にも分かりません。この不確実性こそが「どちらを選ぶか」の本質的な問いです。
長期の積立シミュレーションについては新NISA 毎月5万円積立で20年後はいくらになる?も参考になります。
信託報酬の差は10年後に何円の影響?実際に計算してみた
冒頭で「年0.03365%の差は小さい」と述べましたが、残高が大きくなるほど実額も増えます。具体的に計算してみましょう。
| 運用残高 | 信託報酬の年額差(0.03365%) | 10年間の累計差 |
|---|---|---|
| 100万円 | 336円/年 | 約3,360円 |
| 500万円 | 1,683円/年 | 約16,830円 |
| 1,000万円 | 3,365円/年 | 約33,650円 |
| 3,000万円 | 10,095円/年 | 約100,950円 |
3,000万円もの運用残高があっても年間1万円程度の差です。信託報酬の差は投資判断の主軸にはなりません。むしろ「どのリターン特性を期待するか」という視点が重要です。
リスクの考え方:集中投資 vs 地域分散
S&P500(米国集中)のリスクとリターン
S&P500は500社に分散されているように見えますが、上位10銘柄(Apple・Microsoft・NVIDIA・Amazon・Meta等)で指数全体の30〜35%を占めます。特定のセクター(テクノロジー・情報技術)への集中度が高く、ハイテク株が調整する局面では大きく下落する可能性があります。
一方で、米国は世界最大の経済・市場規模を持ち、過去10年は一貫して強いパフォーマンスを記録してきました。「米国経済の成長を信じる」という明確な投資哲学があるなら、S&P500は最もシンプルで効率的な選択肢です。
全世界株式(グローバル分散)のリスクとリターン
全世界株式は50カ国以上・約2,900銘柄に分散するため、特定の国・セクターの下落リスクを低減できます。ただし先述のとおり米国比率が63%前後あるため、「真の分散」にはある程度の限界もあります。
最大のメリットは「どの国・地域が成長するか分からない」という不確実性への対応です。今後20〜30年で米国の相対的な地位が低下し、インド・アジア・欧州が台頭するシナリオでは、全世界株式の方がリターンが高くなる可能性があります。
株価暴落時の積立継続の考え方については新NISA 株価暴落時は積立を止めるべきか?が参考になります。
どちらを選ぶべきか:タイプ別の判断軸
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が向いている人
- 「米国経済・テクノロジー企業の成長を信じる」という明確な投資哲学がある
- 過去の実績から高リターンを期待したい
- シンプルに米国一本集中で運用したい
- 投資期間が20年以上あり、短期の変動に動じない自信がある
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が向いている人
- 「どの国が成長するか分からないので全部持ちたい」という考え方に共感する
- 米国一強が崩れるリスクをヘッジしたい
- インド・アジアなど新興国の成長も取り込みたい
- 「世界経済全体の成長に乗る」という感覚で投資したい
- 迷ったときに「これ1本でOK」という安心感を重視する
両方持つのはあり?
NISAの積立投資枠では1銘柄のみの設定も可能ですが、複数ファンドに分散することもできます。ただし全世界株式を63%×S&P500と考えると、両方を購入することはS&P500比率を実質的に高めることと同義です。「全世界株式7割+S&P500 3割」のような組み合わせは、「全世界株式単体よりS&P500寄りのポートフォリオ」になります。
迷いを解消する最もシンプルな答えは:「どちらか一方を選んで長期保有を続けることが最も重要」です。どちらを選ぶかより、選んだファンドを暴落時も売らずに継続できるかの方が、最終的なリターンに与える影響が大きい。
新NISAの成長投資枠での活用や銘柄選択については新NISA 成長投資枠おすすめETF・銘柄ランキング2026も参考にしてください。
新NISAでの具体的な始め方
両ファンドとも新NISAの積立投資枠・成長投資枠いずれでも購入できます。年間最大360万円(積立120万円+成長240万円)の非課税枠を活用しながら長期で積み立てるのが最も効率的な活用法です。
年間360万円を満額積み立てるかどうかの判断については新NISA 年間360万円満額 vs 少額積立 どちらを選ぶべき?を参考にしてください。
また、積立を開始したら途中で解約・売却が不安な方はオルカン vs S&P500 どっちがいい?違い・10年リターン・選び方を徹底比較で詳細な比較解説もご覧ください。
証券口座はどこで開設すべきか
eMAXIS Slim 全世界株式・S&P500はSBI証券・楽天証券・マネックス証券・DMM株など主要ネット証券のほぼすべてで購入可能です。各証券会社のポイント還元・使いやすさ・サービスの比較は新NISA おすすめ証券口座比較2026をご覧ください。
口座を持っていない方はまず無料で口座を開設することから始めましょう。手数料ゼロ・最短当日から積立を設定できます。
まとめ:eMAXIS Slim 全世界株式 vs S&P500 比較ポイント5選
- 信託報酬の差は年0.03365%(数百〜1万円程度)——判断の主軸にはならない
- 全世界株式でも米国株が63%——「全世界=低リスク」は過信禁物
- 過去10年はS&P500優位——ただし直近1年は全世界が逆転している事実に注目
- 10年後の差は最大数百万円——どちらのシナリオが現実になるかは未知数
- 「選んで続ける」が最重要——悩むより積立を始め、途中で売らないことが成果を決める
どちらを選んでも、長期・積立・分散という原則を守れば両ファンドとも資産形成の有力な手段です。「全世界か、S&P500か」で1ヶ月悩むより、1ヶ月早く積立を始める方が複利効果で有利になります。
NISAの出口(売り時)の考え方については新NISAの出口戦略|非課税期間終了後はどうなる?もあわせてご確認ください。
投資を始める前の口座選び・手続きに不安があるFP相談も活用できます。


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